中村文則・佐川光晴・山崎ナオコーラ・窪美澄・朝井リョウ・円城塔 (2015). きみに贈る本. 中央公論新社.
key words:中日新聞, 東京新聞, 夕刊
6人の作家による, オススメの本の紹介が収められている
(初出は中日新聞と東京新聞の夕刊).
文章の書き方からして中高生へのオススメということのようだ.
それぞれ10冊ずつオススメの一冊を紹介しているのだが
(そのうちの一冊は自己紹介代わりに自分の著書), 果たして中村文則が, 山崎ナオコーラが, そして円城塔がどんな本を紹介するのか, とっても気になって手に取った一冊.
まずは, 本の紹介ではあるのだが, 読みものとして読んでいてとても面白かった.
中村文則は太宰治の『人間失格』を「最強の「中二病」小説」(:15)だといい, 山崎ナオコーラは「寝る前に「あ」のところから、一ページずつ読んでいくことにした」(:78)という『岩波国語辞典』を薦め, 円城塔は「日本文学と呼ぶにもあまりに日本文学な小説を紹介していくことにしました」(:171)と, 意外にも『源氏物語』や『舞姫』, 『吾輩は猫である』などを紹介するのだった.
もうひとつ面白かったことが, 共感を読書の物差しにしてはいけないと作家らが言っていたことだ.
中村文則は「よく本や映画に触れた後の感想に「共感できたかどうか」というのがある。しかしながら、何かに共感できるのはとてもいいことだけど、「共感できなかったから駄目」という意見は乱暴ではないかと思っている」(:38)といい, 朝井リョウは「本に対する感想の中で、共感できなかった、理解ができず楽しめなかった、というような文章を見つけると、私は少しさみしい気持ちになります。共感とはつまり、本を読む以前の自分と、読んだ後の自分に、何も変化がない状態のことです。心の中にあるモヤモヤをばしっと言い当てられたような文章に出会ったときはもちろん嬉しくなりますが、そうではない文章に出会ったときに、「これは私と違う」という理由だけで受け入れることをやめてしまうのは、とてももったいないことだと思います。」(:146)という.
これはそのまま音楽の聴き方にも当てはまるなと思いながら, 共感しながら(!)読んだのだった.
(山形市のTsuki Cafe, 素敵なお店です)