1/30/2016

Takuro Kikuchi fleur


Takuro Kikuchi fleur
2014.09.03 / HNR-002

仙台在住のTakuro Kikuchiによる8曲入りピアノソロアルバム.

アップライトピアノ(おそらく)で優しく, 朴訥と紡がれる音楽が心地よい.
部屋の中でそっと弾いてくれているようだ.

5曲目「啓翁桜」は10分を越える作品だが, 染み入る音をゆっくりと聴いていられる.
印象的な和音から始まる7曲目「種」がお気に入り.

祈るように合わせた手を想わせるイラスト(ジャケット)もいい.
心をすっと深呼吸させる, 貴重な種類の一枚だと思う.

(写真はこの間お邪魔した山形市「桜舎かふぇ」のカレー. トマトが効いた甘めのカレーに野菜がたっぷり!)

1/29/2016

江國香織ほか 100万分の1回のねこ


江國香織・岩瀬成子・くどうなおこ・井上荒野・角田光代・町田康・今江祥智・唯野未歩子・山田詠美・綿矢りさ・川上弘美・広瀬弦・谷川俊太郎 (2015). 100万分の1回のねこ. 講談社.

key word1977年刊行のロングセラー

佐野洋子「100万回生きたねこ」のトリビュートアルバム.

どのおはなしも面白く一気に読んでしまったが, 中でも町田康「百万円もらった男」, 川上弘美「幕間」が面白かった.
「幕間」はテレビゲームの中の(おそらく…)男の子と猫の話.
何度も生き返る男の子に, 猫は「こうやって何回も死んでは生き返るところは、自分にそっくりだ」(:220)と思う.
そして自分と同じく何度も生まれ変わることができるのに余計なことを考えてしまう男の子のことを不憫に思うのだった (226).

本の裏表紙には100万回生きたトラねこと, 彼が愛した白ねこの後ろ姿が描かれている.
100万回目に彼が見た光景の鮮やかさを想像すると, なんだか胸が詰まるのだった.

(写真は山形市・BOTA coffee. いただいた「BOTA coffee」は深煎りだけどすっきりした苦味で美味しい. 「レモンと洋酒と黒糖羊羮」も美味!)

1/27/2016

DOS ORIENTALES Orienta


DOS ORIENTALES Orienta
2011.07.03 / BNSCD-778

ドス・オリエンタレスの2ndアルバム.

1曲目「LUCES DE TOKYO(東京の灯)」から流れるピアノとドラム, そしてスキャットとアコーディオンが心地よく, 一瞬にして別世界へと連れて行ってくれる.
2曲目「TU ALEGRE PASO(あなたの陽気な歩み)」は まるでバロックのようにお行儀のよいピアノ.
でも, そこはウーゴ, 時折見せる遊びのセンスが抜群にcool.
ヤヒロさんのタブラも心地よい.
3曲目はまさかの坂本龍一「MERRY CHRISTMAS MR. LAWRENCE」のカバー.
続いて4曲目「CABANA DE KUSHIRO(釧路の小屋)」はトロピカル.
7曲目「CORCHEAS BLANCAS(白い8分音符)」のアコーディオンも哀愁たっぷりで素敵だ.
そして8曲目「JUAN Y MINGUI(フアンとミンギ)」では, パンデイロに乗って踊るピアノとアコーディオンがいい.
心地よい, 大人の音楽だ.
ラスト9曲目「AQUARELA DO BRASIL(ブラジルの水彩画)」でもほろ酔い気味でうたわれるアコーディオンがおしゃれ.
音楽を先導するパーカッションも最後までcool.

ドス・オリエンタレスはウルグアイのピアニスト ウーゴ・ファトルーソと, 打楽器奏者ヤヒロトモヒロのduo.
結成は2007.
日本ツアーも多く行っている.

(この間お邪魔した天童市「水車そば」の鳥中華. 同じく元祖鳥中華をうたう山形市「漆山 寿々喜そば屋」さんの鳥中華より甘めのスープ. どちらも美味しいです)

1/25/2016

Thousands Birdies' Legs


Thousands Birdies' Legs Thousands Birdies' Legs
2005.07.27 / MTCH-1154

音楽は印象的にはじまる.
まるで歌わずにはいられなかったと言わんばかりに.
昭和歌謡の雰囲気とジャズの色を併せもった音楽が妖しく響く.

続く2曲目「ニセアカシアの木の下で」は一転してポップな雰囲気.
このノスタルジックな光景はなんだろう.
こんな光景は見たことなどないのに.

不思議な4曲目「ワーディーナトルン」に続いて, 5曲目「北京の憂鬱」は流行りのJ-popのようなノリ.
不思議なバンドだ.

Thousands Birdies' Legsvo, gu, ba, dr, pf5人編成.
このバンドを印象付けるのはやはりvocal・寺尾紗穂の声だろう.
その声がうたう歌には聴くものを夢中にさせる魅力がある.

(写真は天童市「ボンジュール」のチーズケーキ. おじいさんがお一人で作っているこのとろけるスフレチーズケーキが, あのお値段…. 信じられません. お店もまた, 信じられないようなところにありました…)


1/24/2016

山田一樹指揮 東京混声合唱団


山田一樹指揮 東京混声合唱団
2016.01.24, 15:00 / 山形テルサホール

久しぶりの東混のコンサート.

まずはリーク作曲「コンダリラ(滝の精)」.
ホーミーのような男声の響きに, 女声の鳥の声が会場中にあちらこちらから交差する.
水滴の音も加わった森のサウンドスケープが不思議な響きで, 最初から魅了される.

続いて2曲目は(プログラムを変更して)チャットマン作曲「汽車」.
こちらも汽車のサウンドスケープのような楽しい一曲.

続いてピアノ(斎木ユリ)を加えて「エーデルワイス」と「チャパネカス」(メキシコ民謡)が歌われた.

MCを挟んで, 「河口」, 「大地讃頌」, 「唱歌の四季」(三善晃)と歌われる.
「河口」と「大地讃頌」は息の長い, 堂々・どっしりとした演奏.
「唱歌の四季」は楽しげな「雪」のあとの「夕焼小焼」が切なく素敵だった.

休憩を挟んで, 後半は柴田南雄「萬歳流し」から.
秋田県横手市の萬歳を用いたシアターピース.
不思議なハーモニーが鳴り響くなか, ステージ上のスポットライト下に頭巾をかぶった二人の萬歳師が登場.
方言でまくしたてるように喋り, 話している内容はほとんど分からないがなんとも楽しげだ.
やがて, 二人一組になった男声(萬歳師と鼓)が客席へ下りてきて, 客席中を練り歩く.
会場はものすごい喧噪に包まれるのだった.
演奏時間20, とてもスケールの大きなシアターピースだった.

続いて, 歌い継ぎたい日本の歌と題して「春の小川」(上田真樹編曲), 「思い出のアルバム」(鷹羽弘晃編曲), 「おもちゃのチャチャチャ」(), 「幸せなら手をたたこう」(), 「今日の日はさようなら」(篠田昌伸編曲)が歌われる.
開演前のプレトークで指揮者が「一番好き」といっていた「おもちゃのチャチャチャ」はなんとも愉快なアレンジ.
最後の「今日の日はさようなら」はしっとり歌われ, とても美しかった.

アンコールは山中千佳子「たまゆらのうた」(世界初演).
重厚で美しい曲だった.

そしてこの後ピアニストも加わって, 126日に誕生日を迎える山田和樹さんへ「ハッピーバースデー」のサプライズ!
団員のあたたかい雰囲気が伝わってくるのだった.
最後に鷹羽弘晃「2016124日の合唱讃歌」(タイトルが変幻自在な素敵なアンコールピース)が歌われて, 演奏会は締めくくられた.

うたは素敵だ.
心の中にしみこんできて, 一瞬にして繋がれる.
そんな気がする.

(写真はお昼にお邪魔した山形市・monsieur sato. 前菜からこのゴージャスさ!幸せでした)

1/18/2016

cat or die UNDERCURRENT


cat or die UNDERCURRENT
2005.09.01 / GGCD-03

原美術館のミュージアムショップでだいぶ前(!)に買った一枚.

トラックは24曲に別れているものの, ずっと一続きのような音響作品.
トイピアノ, 鍵盤ハーモニカ, ギター, 電子音, オルガン, そしておもちゃのような打楽器たちが不思議に交差する心地よい音楽.

cat or die」は, 「おおつかひできと飼い猫ふう、さむを主要メンバーとする宅録・玩具音楽ユニット」(webより)だという.

朝でも, 夕方でも, 珈琲を飲みながら聴くのがおすすめ.

(写真は庄内町「町湯」. ろうりゅ初体験息もできないくらいの熱波でした. 下の写真は酒田のパン屋さん・喜屋さんのクッキー. 美味しい!


1/15/2016

kazumasa hashimoto Strangeness


kazumasa hashimoto Strangeness
2010.03.05 / CXCA-1265

作曲と全ての楽器の演奏, そして録音とミックスまで担うkazumasa hashimoto5枚目になるオリジナル・アルバム.

村の音楽隊と少女が歌っているような (vocalGutevolk(西山豊乃)による), 素朴で不思議な音楽.
まるで夢の中のような世界は, どこか現実離れした響きとして届く.

ラストの10曲目「Strangeness」は, 繰り返される左手のパターンの上で右手が静かにうたうピアノsolo.
20分を越える長さだが, 気持ちよく, ずっと聴いていられる一曲.

(写真は山形市「piirakka」のショコラと苺のモンブランクリームタルト)

1/12/2016

高橋源一郎 ぼくらの民主主義なんだぜ


高橋源一郎 (2015). ぼくらの民主主義なんだぜ. 朝日新聞出版.

key words:何種類もの「民主主義」, 『ぼくらの国なんだぜ』

「小説以外のことはあまり書かないようにしようと思っていた」という著者が, 「小説以外のことを書きながら、実は、そのどれもが、小説に関係あるんじゃないか、と思った。いや、小説に関係のないことなんかないんじゃないか、とさえ思うようになった」という (251).
本書は, そんな小説家が朝日新聞に連載(2011.04.28 - 2015.03.26)した「論壇時評」だ.

本書のキーワードのひとつは, タイトルにも表れているとおり「民主主義」である.
民主主義とは, 「たくさんの、異なった意見や感覚や習慣を持った人たちが、一つの場所で一緒にやっていくためのシステム」(:254)であり, 「ぼくたちは、ひとりで、何種類もの「民主主義」に参加している」(:255)と著者はいう.
そして民主主義の実現の仕方は無数にあり、それはひとりひとりの「ぼくらの民主主義」なのだとする (:同).

考えさせられる文章が多数収められていたが, 特に印象的だったのは「みんなで上を向こう」(2011.06.30)と「記憶の主人になるために」(2014.11.27)と題された2つの論考だ.

「みんなで上を向こう」は, 原発問題をはじめとした, 社会のさまざまな場面で無かったことにされる/見えないようにされる システムについてまとめる.
そして筆者は鷲田清一の「見えないものは多いが, 見えているのに見てこなかったものはさらに多いのではないか」という意見に触れ, こう言う.
ぼくたちには(専門家らが見つけたものを)素人として「見よう」という強い意志をもつことが必要なのだ (22), .

「記憶の主人になるために」では, 朴裕河の「帝国の慰安婦」の日本語版出版から, 従軍慰安婦問題が取り扱われる.
ここでも, 消された声/記憶について考えが巡らせられる.
朴の著作に触れ, 「かつて、自分の身体と心の「主人」であることを許されなかった慰安婦たちは、いまは自分自身の「記憶」の主人であることを拒まれている」(:226)とする.
さらに, なぜ「過去」が「現在」の問題となるのか,(自分も含めて)若い世代が一番気になる点についても論を展開する.
著者は, このことについて「それは、「過去」というものが、決して終わったものではなく、その「過去」と向き合う、その時代を生きる「現在」のわたしたちにとっての問題だからだ」(:227)とする.
そして, テッサ・モーリス=スズキの「過去は死なない」に触れ, 「過去はいまもわたしたちの中で生きている」(:228)とするのだった.

いずれも, 「誰でも使える、誰にでもわかる、「民主主義」なんてものは存在しない。ぼくたちは、ぼくたちの「民主主義」を自分で作らなきゃならない」(:254)という著者の考えに自ずと結びつくものだった.

本書の最後, あとがきで著者はこう述べる.

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すぐに、ぼくは社会や政治について語ることばを、実は、誰も持っていないのではないだろうか、と思うようになった。
そして、社会や政治のことを書くためのことばを探しながら、ぼくは書いていった。
けれど、そのことばなら、知っているような気がした。
小説のことば、文学のことばは、こんなとき、こんな場合にこそ、その力をもっと発揮できるように思えた。(:253

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ことばを重ねて・交わして, 自分たちの民主主義をつくる方法をぼくらは考えなければならない.

(写真は先日お邪魔した山形市「38 garden cafe」のダッチオーブンパンケーキ. ふわふわで美味い!)

1/10/2016

Bread Lab CRAFT BAKERIES


入江葵 (2015). CRAFT BAKERIES:パンの探求 小麦の冒険 発酵の不思議. Bread Lab.

key word:クラフトベーカリー

「焼き立てのパンのあのにおいは、私にとって「幸せのにおい」そのものです。」(:「はじめに」)

そう言う入江葵が書いたパンの本.
入江はBread Labのチーフ・ディレクターを務め, 青山パン祭りも主催している.

眺めているだけで幸せになる一冊.
大好物の山形市「KOUB」の湯種食パンも紹介されています!

(写真は村山市「ひつじや」. ジンギスカンのお肉はボリュームたっぷり. そして, 安納芋のサラダ (揚げたじゃがいもも混ぜてある!), いぶり大根のオリーブオイルマリネ, ビーツ, フェタチーズの「本日のサラダ」(マスタードドレッシング)が絶品でした!

1/09/2016

佐々木宏 新訳『ドラえもん』


佐々木宏編著 (2014). 新訳『ドラえもん』. 小学館.

key word:さようなら、ドラえもん

本書には, 監督・山崎貴がセレクトした, 映画「STAND BY ME ドラえもん」の元となった7作品と, それにまつわる編著者と監督の言葉が収録されている (9).

たしかに, ドラエもんはいつものび太の近くにいた.
当たり前のように.
しかし決してそうではなく, 「ドラえもんは未来からやってきたロボットで、いつでも帰ってしまう可能性を秘めているのだ」ということを再認識する物語をつくりたい(:157)と山崎は考えたのだという.
そして, 「当たり前のように見える「日常の風景」がどれほど貴重で尊いものであるかということを、逆に照射できればいいなと思っ」(:同)たのだ, .

薄い本だが, のび太とドラえもんの出会いから別れまでを描いている, 深い一冊.
切なくて, 愛おしい物語.

(写真は米沢市・小野川温泉「龍華」の豆もやしラーメン. あたたまる!)