1/04/2016

五味太郎・山折哲雄 砂漠と鼠とあんかけ蕎麦


こんなに暖かく雪の無い1月があっていいのでしょうか….
恐るべし, スーパー・エルニーニョ.
ということで (雪もないし), 今日は午後から福島・高湯温泉の「あっかた湯」へ行ってきました.
源泉かけ流しの露天風呂, オススメです!

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五味太郎・山折哲雄 (2011). 砂漠と鼠とあんかけ蕎麦:神さまについての話. アスペクト.

key word:乾燥

「神っていったい何ですか?」

この問いについての延べ30時間に及ぶ対談の抜粋をまとめたものが本書だという (271).
そう問う五味太郎は, 「神は無神論者だよ、ぜったい」と自身の絵にタイトルをつける考えのもち主だ (262).

話は多岐にわたるが, 面白いなと思ったのは, 湿度や乾燥などの風土から歴史を考察する山折の考え方(:85, 198など)だ.
カラカラに乾燥した風土でないとイスラム教をはじめとする宗教は生まれなかった, という.
それは乾燥した風土が「人間と神の関係を極限まで考え」させるからだとし, たとえばその思想はカニバリズムの風習とも結びついているとして, アステカとチベットを結び付けたりもする(: 180-181)のだった.

また, 「殺すな」「嘘を言うな」「盗むな」と昔から続いてきた倫理律を「命を大切にしろ」「真実を語れ」「与えよ」と口にしやすい形に変えている今の世界に危機感を覚える, と山折はいう (120-122).
それに五味は「それにコピーライターが絡んでイラストレーターが絡んで……。ちょっと背筋が寒くなりますね。」(:123)と応える.
対談は震災前のものであるが, その状況はまさに震災後に増幅された.

さらに山折は, 「地球環境問題を始めとして、経済状況、エネルギー、食糧問題、今のグローバルな課題は、その根っこのところを考えていくと、すべて人権宣言から出てきている」とし, 「そろそろフランス革命の人権宣言の見直しをするべきときにきていると思います」というのだった (157).
これもまさにいまの状況そのものをズバリと言い当てる.
いや, その状況は震災よりもずっと前からあったのだ.

対談の終盤, 神様はなぜ必要なのかと問う五味に, 山折はこう答える.
「対話者が必要なんだな。人間同士の話とはちょっとレベルを超えた対話者、そういう上位のパートナーを人間は本質的に必要としている」(:245)と.

なんともすっきりとした, 読んでいてふっと心が軽くなる一冊だった.

(写真は山形市「お菓子のクレマ」. レモンのスフレ・チーズケーキとモッツァレラ・チーズのブリュレが絶品!)