12/30/2015

繕い裁つ人


映画「繕い裁つ人」
監督:三島有紀子 / 2015

夜会の衣裳がどれも素敵.

こだわりをもって作られた服は, 着る人を代弁するかのように その人自身をも映し出す.
うそ偽りなく, 誠実に.

穏やかだけれども, 芯の強さを感じる一本だった.

(上の写真は仙台駅の地下「ずんだ茶寮」. 今日はすごい人でした. そしてもうひとつ, 下の写真は昨日お邪魔した上山市「nuage muffin」のマフィン! ファンキーな見た目です. 今年も食べてばかりいながら終わって行きます…)

12/29/2015

ぼくのりりっくのぼうよみ hollow world


ぼくのりりっくのぼうよみ hollow world
2015.12.16 / VICL-64487

その名前に「?」が飛び, TOWER RECORDで手に取った一枚.
閃光ライオットのファイナリストなのだという.

まずはその歌声に惹き付けられる.
そしてその声で歌われるテキストがいい.

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涙おちる前にその指で時を凍らせて
変わって行く世界に足が竦んでる

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2曲目「パッチワーク」で17歳はこう歌う.

他にもドキっとさせられる言葉がたくさん詰め込まれた一枚だ.

(写真は山形市・大沼食堂の中華そば. スープが絶品!)

12/28/2015

井上荒野 リストランテ アモーレ


井上荒野 (2015). リストランテ アモーレ. 角川春樹事務所.

key words"黒い瞳" のメロディ, M

杏二がアモーレでつくる料理の美味しそうなこと.
読んでいるだけでお腹が空いてくる.

偲(と杏二)の父偲に帰宅前にお風呂を沸かしていてくれた父に触れ「父というひどい男のいちばんひどいところは、無責任で嘘吐きで身勝手なのに、この種の心遣いをする心根も同時に持ち合わせていることだと思う。この性質は杏二にもじゅうぶんに受け継がれている」(:41-42)と思わせる, 父)もいい味を出している.
たしかに, 父子は似ている (恵方巻きみたいに見えてしまう(:227)ギャルソン姿は息子とは似ていないようだが…).

杏二の心を揺さぶる謎の女Mの正体が最後に明かされ(といっても謎だらけだけど…)小説は終わる.
その中で巻き起こる出来事はさまざまあるのだけれど, なんだか穏やかでやわらかい一冊.

(写真はお土産でいただいた飯豊町・がまの湯のふたご玉子. 大きい!)

12/27/2015

伊坂幸太郎 アイネクライネナハトムジーク


伊坂幸太郎 (2014). アイネクライネナハトムジーク. 幻冬舎.

key words:現在, 九年前, 十九年前, 斉藤さん(一回 百円)

久しぶりに伊坂幸太郎を読む.
読みながら, 「えっ!?」「ウソ!?」と何度も言っている自分がいた ().

連作短編集, というのだろうか.
それまでのストーリーが見事ひとつに収束する最後の話「ナハトムジーク」が圧巻.
特に小野のボクシングの試合, 九ラウンド目の描写(:271-)が素晴らしい.
スピード感溢れる展開に, 手に汗握りながらページを捲った.

作家自身があとがきでいうように, 伊坂作品には珍しく「泥棒や強盗、殺し屋や超能力、恐ろしい犯人、特徴的な人物や奇妙な設定」(:285)が出てこない, 恋愛にまつわる話.
中毒性満点の一冊だった.

(写真は米沢市「La Scarpetta」のティラミス(米沢産くるみを使用)! with 優(フリースクール)とのコラボ商品なんだそうです

12/26/2015

PASCAL LE BOEUF PASCAL'S TRIANGLE


PASCAL LE BOEUF PASCAL'S TRIANGLE
2013.05.28 / Nineteen-Eight Records 19/8-808621 1029 25

Pascal Le Boeufpf)とLinda Oh (bass), Justin Browndrum)のトリオ.

眩暈のような1曲目「Home In Strange Places」がいい.
とってもcool.
3人でなにかスポーツでもしているかのような4曲目「What Your Teacher...」は高速playで手に汗握る.
6曲目「The Key」は散文詩のようにピアノが散りばめられる部分が印象的だ.
どれも短い曲だが, 息のあった演奏が聴ける.

でも, ピアノ・ソロの8曲目「Return to You」が一番お気に入り.
静かな森のなか, 湖のほとりにいるようだ.

(写真は山形市・「カシェ・ルポポ」)

12/24/2015

Fab Cushion BERMUDA TRIANGLE


Fab Cushion BERMUDA TRIANGLE
2014.04.20 / EK-002

Fab Cushionは井筒昭雄のソロプロジェクト.
井筒は中路あけ美とのユニットである「LEMO」での活動のほか, CMや映像音楽でも多数活躍している.
その作品にはcuteな印象を持っていたのだが, 本作ではまた違う一面を見せる (当然、ボーカルが男声だということもあるが).

BERMUDA TRIANGLE」は前作から13年ぶりのリリースになるのだという.
井筒は作詞・作曲から, ドラム, ギター, キーボード, プログラミング, ボーカル,
コーラス…と, ほとんどすべてを担当する.

ミュージカル・ソーの響きが緩く絶妙に漂う.
だが, 脱力系とよぶにはあまりにナンセンスでストレンジ….
歌詞も然り.

レトロで風変りな一枚だ.

12/23/2015

渡辺俊美 461個の弁当は、親父と息子の男の約束


渡辺俊美 (2014). 461個の弁当は、親父と息子の男の約束。マガジンハウス.

key words:弁当, 弁当箱

弁当はいい.
開けるときのわくわく感はもちろん, 机の上に並べて見渡したときの感じ, 最初に何を食べるか迷う感じ, そして食べ終わって空になった弁当箱をまた丁寧に包む感じ….
どれも好きだ.
自分で持って行って持って帰って来るというのもポイントのひとつだ.
弁当は素敵だと思う.

番外編として収められている息子の文章がいい (156-159).
弁当で会話し, 弁当箱と中身をデザインし, 食材で季節を感じる.
弁当はやっぱり素敵だ.

(広島から牡蠣が届きました!)

12/13/2015

多和田葉子 献灯使


多和田葉子 (2014). 献灯使. 講談社.

key words:銀色同盟

「献灯使」, 「韋駄天どこまでも」, 「不死の島」, 「彼岸」, 「動物たちのバベル」(「ある大洪水の後」というト書きから始まる動物たち(の役をした人間たち)の戯曲)の5つが収められた一冊.
いずれも震災後に書かれた物語だ.

「献灯使」は, 2度の大地震と原発事故の結果 鎖国することになった近未来の日本が舞台.
放射能の影響か「死ねないからだを授かった」(:48)老人の義郎と, 彼の曾孫である無名の物語だ.
そこでは, 東京二十三区全体が「長く住んでいると複合的な危険にさらされる地域」に指定され, 土地も家もお金に換算できるような種類の価値を失っている (51-52).
本州は気候が乱暴で気まぐれな性格になったせいで農業がやりにくくなっていて (58), 沖縄は本州からの移民を受け入れるようになっている (59).
英語の使用が禁止され, 公の場で外国語の歌を四十秒以上歌うことは禁止されている(:60)….
冗談のような, ふざけているような, それでもなんだか現実味のある状況が紹介されるのだった (ナンセンスを小説の中へ巧に組み入れていく術は, かつての「犬婿入り」に通ずるところがある).
そんな中, 優秀な子どもを選び出して海外に送り出す「献灯使の会」(:151)に入っている小学校教員・夜那谷は, 無名に白羽の矢を立てるのだった….

「献灯使」の二年前に発表されている「不死の島」では, その背景となるようなストーリーが展開される.
福島で事故があったあと, すぐにまた大きな地震が来て日本は取り返しのつかない被害に襲われる (192).
大混乱になった日本では, 二〇一五年に政府は民営化され, Zグループと名乗る一段が株を買い占めて政府を会社として運営し始めた (194).
二〇一一年, 福島で被爆した当時老人だった者たちは, 死ぬ能力を放射性物質によって奪われ死ねなくなる(:196)のだった….

この二つの物語は, 2014年と, 2012年に発表された作品である.
それは小説家の予言だったのか….
短い「不死の島」には, 今となっては既視感のある情景が次々と登場する.
そしてどちらの小説も, 「え, ここで終わり?」という取り残された感を読者に与えたまま, 一方的に打ち切られる.
「不死の島」というタイトルが意味するところも, 無名が献灯使として果たして海外へ送られたかどうかも, 不明なまま.
それは, その状況が今も続いていて, 「続きは現実で」と言おうとしているかのように….

(写真は山形市・嶋のパン屋さんTENN. でパンとキッシュ(キャベツと生姜のキッシュ!)と共に購入した, 店舗を持たないケーキ屋さん「moco-choco」さんのラムチョコチーズ. 小麦粉を使っていないケーキはフレッシュな感じで美味しい. この間 酒田で買って来た喫茶Riantさんのブレンド1(ブラジルベース)といただきました)

12/09/2015

蜷川実花展



蜷川実花展
2015.11.28 - 2016.02.28 / 新潟県立万代島美術館

広い展示室の壁は360度作品に取り囲まれている.
観客は最初の展示室(「Flowers2015)」C-print 106点)から色の洪水に飲み込まれる.
生き生きとしたその色彩には圧倒的な力があり, 観るものをぐっと引き寄せる.

続く展示室は「桜」(2011)の展示.
最初の展示室とは一転, 静かに, でも気高く咲く桜の姿が映し出される.
震災の年に撮られたという花の数々.
万華鏡の底のような桜の花びらが印象的だった.
どこに焦点があるのか, まるで水の中にいるような気分になる.

3つ目の展示室「TOKYO INNOCENCE」(2013-2015)に続いて, 4つ目の展示室は「PLANT  A TREE(2011)の展示. 
こちらは雪のような, 冷たく散る桜.
スピード感のある画で, 2展示室の桜とは全く別の表情を見せる.

5展示室は「Portraits」(2012-2015)のシリーズ.
被写体の意外な一面が映し出されるのは蜷川の作品ならでは.

6展示室では中くらいの作品「noir」(2010)が横一列に展示室を取り囲む.
世界の暗い部分もまた, 蜷川は鮮やかに切り取るのだ. 

7展示室での「noir / Self-image」(2010-2015)の展示に続いて, 8展示室では「Self-image」(2013)が展示される.
モノクロームが逆にリアルを映すのは余計なものを削ぎ取った結果だからか.
自分自身を映すとは, いったいどんな経験なのだろう.
そんなことを考えながらセルフポートレートの数々を眺めた.

最後の第9展示室は「花火」(2014-2015)の展示.
まるで抽象画のような作品の数々.
まばゆい, 光の爆発.
圧縮されたエネルギーを切り取って, 花火の生々しい部分を強烈に見せた.

活動20年の区切りを迎えたという蜷川実花.
474点にのぼる作品の数々から, 彼女の作品の多彩さを存分に感じることが出来る展覧会だった.

(久し振りに寄ってみようと思った古町の「砂場」(焼き立てスコーンが最高でした). なんと…, 閉店してしまっていたんですね…)


12/05/2015

6-dim この瞬間を一緒に笑おう。


6-dim+ Japan Tour Project in 仙台:この瞬間を一緒に笑おう。
2015. 12. 05, 1930分開演 / 仙台市Goibniu

仙台駅東口近くの第一さくらビルという小さなビルの一室が会場.
ブラウンのグランドピアノがある, カウンター付きの小さな部屋.
お客さんは40人ほど.

開演前, 観客はメンバーから台詞をひとつずつお願いされる.
(ちなみにもらったお題は「小・中学生の頃の自分へ今だから言えるアドバイス」)
この集められた台詞が, 即興芝居中たびたび使われることになる.
なんとも面白い.

即興のヴァリエーションもたくさんあって, 文節ごとにどんどんリレーして物語を作っていくものや, 芝居中に突然ひとりがフリーズしてしまい(!)3秒以内にタッチしてあげないとアウト(次の展開を夢中で考えていたりするとフリーズしている相手に気が付かない)という「飯塚」というもの(福岡の飯塚で生まれたので命名)や, お題を決めてどんどん即興で繋いでいくものなど, 盛りだくさん.
最後, まさか最初の地下鉄(ずんだ焼きおにぎり!)に話が繋がるとは(東西線は明日開通)…, ものすごいセンス!
ロクディムの5人の息もぴったりで, 客席もどんどん引き寄せられていった.

終演は21時過ぎ.
あっという間の90分間だった