5/18/2014

大橋トリオ DELUXE BEST


大橋トリオ DELUXE BEST
2014.03.05 / RZCD 5950911/B

豪華4枚組, 大橋トリオ・初のベストアルバム.

1枚目の「スタンダードベスト」, 2枚目の「バラードベスト」もいいが, 3枚目の「カバーベスト」がとてもいい.
「贈る言葉」(海援隊)や「traveling(宇多田ヒカル), 「ラストシーン」(布袋寅泰:大橋トリオ名義では初)など発表済みの曲の他に新しく「Water is wide」も収められている.
彼が見ている/耳にしている世界が, そして彼がつくりたい音楽がよく分かるような曲の数々.

もう一枚, 4枚目はミュージックビデオを収めたDVD.
まさにデラックス!

(上の写真はお昼にお邪魔した仙台市「オジーノカリーヤ」. そして下の写真は昨日お邪魔した上山市の「HATAKE Cafe. 春です)


5/12/2014

観世銕之丞 杜若


12 東北芸術工科大学伝統館 薪能
2014.05.12 / 東北芸術工科大学水上能楽堂「伝統館」

「千鳥」(山本東次郎)と「杜若」(観世銕之丞)の2.

「杜若」は恋之舞の小書演出付き.
橋掛りに立つ杜若の精の, 水面にゆらめく炎と黄金色の唐衣.
最後, 橋掛りを帰って行く旅僧の後姿がなんとも切なくて, それはまさに一夜の夢から覚めて彷徨うさま.
水鏡に映る恋しい人の名残の向こうに, 果たして何を見たのか….

薪の爆ぜる音とその香り, そして時折吹き抜ける風が心地よいなか, そんなことを想った

5/03/2014

米原万里 心臓に毛が生えている理由


米原万里 (2008). 心臓に毛が生えている理由. 角川学芸出版.

key word:文化を跨ぐ

ロシア語通訳者であった米原万里のエッセイ集.
以前ふと目にして気になっていた文章を探していたのだが, その文章が収められていたのがこの本だった.

そのエッセイは「○×モードの言語中枢」(:106-109)という, プラハから帰ってきた日本の中学校で, 年号を答えさせるものや○×方式での回答のみ求められる歴史のテストに「正直言って、嘘じゃないか、冗談じゃないかと思った」(:107)というものだった.
その続編となるエッセイ「脳が羅列モードの理由」(:134-137)と合わせて, 多文化で育った筆者ならではの視点が新鮮で面白い.

その他にも, 「餌と料理を画する一線」(:81-84)というエッセイでは, 陶磁器ではなくプラスチックの食器が多く用いられるようになった状況を「日常的に食事のプロセスを楽しむことなどに一片の価値も見いだせない効率一辺倒な、快楽を無駄としか解釈できない精神の貧しさが、未だに日本人の食生活の、いや生き方の根底にあるのではないか。まるで発作のようにどこか落ち着きのないグルメブームの背後にも、そういうせかせかした貧乏根性が見え隠れしてならない。」(:84)と喝破する.
海外での暮らしが長かった筆者ならではの視点で, 痛快にまとめてくれる.

また, ロシア語ではあまたある褒め言葉が日本では「スッバラシイー」の一言で全て事足りて便利だといったチェリスト・ロストロポーヴィッチに触れたエッセイ「素晴らしい!」(:122-125)では, 「何しろ、『枕草子』の頃から、心を揺さぶられたおりの多様なニュアンスを、「あはれ」の一言で括ってきた伝統が、わたしたちの言語中枢に息づいている。若い御嬢さんたちが、好ましいモノすべてを、「カワイイ」の一言で片づけているのも、清少納言の延長線上で捉えれば、眉ひそめるのも躊躇われてくる。」(:124-125)という.
なるほど, 言われてみれば納得である.

エッセイの話題は多岐にわたるが, どれも愉快痛快, 面白い文章ばかりである (ちなみに本のタイトルは, 小さな差異が気になって仕方ないタイプの人は同時通訳という職業には向かない, 同時通釈者の心臓は剛毛に覆われている(省略して構わない言い回しはすっぱりと切り捨てていい)と書く同名のエッセイ(:126-129)から来ている)

※amazonでの取り扱いは文庫本のみ