山形交響楽団 ユアタウンコンサート:南陽公演(ホールオープニング記念)
2016.02.21, 16:00 / 南陽市文化会館大ホール
山響の南陽コンサート.
新しい南陽のホール, 席に座ると入ってくる光景は360度 木のナチュラルな色.
とてもあたたかい雰囲気だ.
演奏前のプレトークでは, 世界最大の木造ホール(キャパ1403)としてこのホールが(ヘルシンキのホールを抜いて)ギネスへ登録されたことなどが話される.
飯森さんと事務局長の楽しいトーク.
新ホールには設計の段階から飯森さんが関わっていたのだという.
南陽市長のあいさつ(!)に続いて, 今日の1曲目はモーツァルト「交響曲
第1番 変ホ長調 K.16」.
モーツァルト8歳のときの作品.
ステージ上には演奏者の椅子がない
(対面配置, 中央・雛段最上段がコントラバス).
モーツァルトの時代, オケは少人数であり, 立って演奏することもままあったのだという.
今日は当時のスタイルで, 立って演奏するとプレトークで説明があった.
今日のコンマスは高橋和貴.
オリジナル楽器のために2音でチューニングする光景も耳慣れたものになってきている.
第一楽章はやわらかく, 明るい響きでスタート.
飯森さんも指揮台・譜面台・タクト無しで振る.
どこか素朴な響きが微笑ましい.
続く第二楽章はさらに素朴.
短調の響きが哀愁漂う.
ラスト第三楽章は力強くスタートして駆け抜けた.
なんとも爽快な演奏だった.
2曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲
第2番 ハ短調 作品18」.
ソリストは高橋優介, 22歳.
一昨年に東京でチャイコフスキーで飯森さんと共演したのだという.
その時の彼のパワーと純粋さのバランスが素晴らしく, 今回の共演となったとの話がプレトークであった.
登場したピアニストは小柄で長髪.
礼儀正しくお辞儀をし, 静かに弾き始めた.
第一楽章は大きな波が次々とうねり, ぶつかり, 飛沫が上がる.
ピアノの音がはっきりと力強く, 素晴らしい.
オケもいい (後半のHnのsoloがbravo!).
まさに疾風怒涛, その外見からは想像がつかない力強いplayで弾き切った.
第二楽章は吸い込まれそうになるPfの潤んだアルペジオがいい.
そしてClのsoloが秀逸.
うっとり, とろける.
Pfのカデンツァはソステヌートペダルでトリルの響きを唸らせた.
ラストの弦のメロディも過剰に歌いすぎることなく切なさを携えていて, とても素敵だった.
第三楽章はなんといっても変幻自在なPfが印象的.
少し速めのテンポで嵐のように駆け抜けたかと思えば, 儚く切なく上空で歌う.
これはすごいピアニストになりそうで楽しみ.
演奏後 鼻血が出てしまって, ティッシュを詰めながら(!)弾いてくれたアンコールはカプースチン(8つの演奏会エチュードop.40 第2番「夢」)!
それをあんなに軽々と弾かれてしまい
(しかも鼻血を出しながら(笑)…), 圧巻の演奏.
客席の反応ももの凄く, 度重なるカーテンコールで, 団員がはけるまで拍手は鳴り止まなかった.
休憩を挟んで3曲目はベートーヴェン「交響曲
第5番 ハ短調「運目」作品67」.
昨年まで9年をかけてモーツァルトの全曲を演奏した山響.
今年はベートーヴェンの全曲をやるのだという.
モーツァルト演奏会の際にも使ったオリジナル楽器で, 19世紀初頭の響きを再現してみようと思っている, とプレトークで話があった.
第一楽章は少し速めのテンポで前へ前へと進んで行く仕方.
力強く振るマエストロと, 吠えるHnが印象的.
第二楽章は前半冒頭のVcとVaのアンサンブルが美しい.
そこから紡ぎだされる音楽は, どんどん拡がっていく様が目に見えるようにゴージャス.
ラストは力強く終止した.
第三楽章は強奏と弱奏を厳密に対比させることで力強い音楽と昂揚感をつくる.
そして音楽はアタッカで第四楽章へ.
今日聴いて思ったが, これは天上の祝祭の音楽だ.
なんとも華やかな演奏だった.
きっと19世紀の人々もこの響き耳にして心を高ぶらせたのだろう.
最後に飯森さんから「みなさんにホールを育てていってほしい」とあいさつがあって, コンサートは18時過ぎに終演.
なんともあたたかく, 心に残る音楽会だった.
(写真はREPACO米沢店の「純米生ショコラ」. 甘い…)