2/29/2016

Lars Jansson Trio Facing The Wall



Lars Jansson Trio Facing The Wall
2015.07.21 / SOL SV-0033

1曲目「Prelude To A Restless Mind」は, ラーシュ・ヤンソン流のプレリュード (平均律).
偶然浮かび上がるメロディが愛おしい.

続いて爽やかな2曲目「Facing The Wall(アルバムタイトル曲).
朝の光景.
だが, その印象に反してこの曲に付けられたタイトルは「壁」.
解説によると, 達磨大師が9年間洞窟の壁に向かって座禅を続けた伝説に由来するのだという.
何か突き抜ける感じを表したのか.

4曲目「Nobility And Beauty」も明るく爽やか.
高速の指回しが印象的な5曲目「Configuration」は快活でアグレッシブ!
どちらもドラムとベースとのやり取りも軽快.

6曲目「Quito」がいい.
スローテンポでノスタルジックなのが, やはりラーシュヤンソンの真骨頂だと思う.
柔らかくやさしい音色にうっとりする.

7曲目「Catching The Ox」は短いピアノ・ソロ.
すばやい前衛的な響きは知的な牛たちか.

11曲目「Autumn Sun」はタイトル通り, やさしく穏やかなスウェーデンの秋.
こちらもとても心地よい.

ラストの13曲目「To A Sweet Dad」は旅立った父へのオマージュだという.
あたたかく柔らかな響きが愛情を込めて奏でられる.

すべてオリジナルの13.
ずっと聴いていたい一枚.

(秋保「さいち」のおはぎ (あんこ, ゴマ, きなこの3種類). おはぎも美味しかったのですが, お惣菜コーナーで打っていたタマゴサンドがとっても美味しかったです! そしてもう一枚は, 久しぶりにお邪魔した仙台市「火星の庭」. う~ん, やっぱりたくさん買ってしまいました…)

2/28/2016

諸富祥彦 教師の資質


諸富祥彦 (2013). 教師の資質:できる教師とダメ教師は何が違うのか?. 朝日新聞出版.

key word:教師の資質=子どもとかかわるすべての大人に必要な資質

「教師を支える会」代表, 教育カウンセラーでもある著者が書いた「これからの教師が身につけておくべき、新たな「教師の資質」」(:3)についての一冊.
最近の学校現場の様子や子どもの変容, 新しい学力とそれを身につけさせるための教師の資質についてまで, 話題は多岐にわたる.

教師の人事考課によって失われてしまった教師間のチームワーク(:72-75)や, 仲間から排除されることを恐れる(特に女子)生徒の問題(:93-95)など, 学校空間で追い詰められていく教師や生徒の姿を筆者は紹介していく.
なんとも, 読んでいて切なくなる現状だ.
そして, それゆえ教師は共感力をもった「人間関係のプロ」でなくてはならない(:163)とし, さらにこれからの教師は「日々、直面するさまざまな状況の要請(問い)に対して、自らの内的諸力を総動員して応答していく能力」である「応答力」(=キー・コンピテンシー)を教えられる存在でなければならない (211), とするのだった.

(お昼にお邪魔した東根市「ラ・ターナ」. 自家菜園フェンネル・イワシ・イタリア産アンチョビのソースのブカティーニというチューブ状のロングパスタ. サフラン風味で干しブドウがいい味を出していました)

2/27/2016

ハンバート ハンバート 11のみじかい話


ハンバート ハンバート 11のみじかい話
2005.05.25 / MDCL-1469

1曲目「おなじ話」(NHK「サラ飯」で使われていた)から二人のやわらかい空気が満載.
やさしい声が心地よい.
夏秋文彦のメロディオンも最高(他の曲でも)!
ノスタルジックな2曲目「旅の終わり」, フィドルが切ない7曲目「道の標べに」、インストの8曲目「Waltz op.2」、ラスト11曲目「明日の朝には」もいい.

ほんわか, ゆっくり, 少しキュンとなる一枚.

(写真は南陽市「icho cafe」のふわふわフレンチトースト. 薪ストーブが暖かい)

2/24/2016

平野紗季子 生まれた時からアルデンテ


平野紗季子 (2014). 生まれた時からアルデンテ. 平凡社.

key words:「パンケーキよりはんぺんだ!」, 「知らない過去は未来なんだ。」

著者の独断と偏見(?)で綴られた, 食べものに関する文章の数々.
その面白くなんとも美味しそうなこと!

たとえば, 赤坂のホットケーキパーラー「Fru-Full」のフルーツサンドを目の当たりにして, 著者はこういう.

------

鋭角に揃った一直線の断面は狂気。
熟したフルーツのサイズ感は完璧で、
ひんやりとなめらかな生クリームが包む。
純白の食パンはふわふわと口溶けて
泡のように消えていく。

圧倒的。
圧倒的な存在の出現で崩れる甘い秩序。

フルーツサンドが戦争を始める。(:22

------

その他, 「ロイヤルホスト某店の、チェーン店とは思えぬ独創的かつプロフェッショナルなサービスでおなじみに遅番紳士小林さん(仮)を密かに追い続けた執念の記録」(:130-137)も面白い.

是非, 彼女が書いた他の文章も読んでみたいと思った.

(写真は米沢市「maple bakery」の塩パン. 美味い!)

2/23/2016

中村文則ほか きみに贈る本


中村文則・佐川光晴・山崎ナオコーラ・窪美澄・朝井リョウ・円城塔 (2015). きみに贈る本. 中央公論新社.

key words:中日新聞, 東京新聞, 夕刊

6人の作家による, オススメの本の紹介が収められている (初出は中日新聞と東京新聞の夕刊).
文章の書き方からして中高生へのオススメということのようだ.
それぞれ10冊ずつオススメの一冊を紹介しているのだが (そのうちの一冊は自己紹介代わりに自分の著書), 果たして中村文則が, 山崎ナオコーラが, そして円城塔がどんな本を紹介するのか, とっても気になって手に取った一冊.

まずは, 本の紹介ではあるのだが, 読みものとして読んでいてとても面白かった.
中村文則は太宰治の『人間失格』を「最強の「中二病」小説」(:15)だといい, 山崎ナオコーラは「寝る前に「あ」のところから、一ページずつ読んでいくことにした」(:78)という『岩波国語辞典』を薦め, 円城塔は「日本文学と呼ぶにもあまりに日本文学な小説を紹介していくことにしました」(:171)と, 意外にも『源氏物語』や『舞姫』, 『吾輩は猫である』などを紹介するのだった.

もうひとつ面白かったことが, 共感を読書の物差しにしてはいけないと作家らが言っていたことだ.
中村文則は「よく本や映画に触れた後の感想に「共感できたかどうか」というのがある。しかしながら、何かに共感できるのはとてもいいことだけど、「共感できなかったから駄目」という意見は乱暴ではないかと思っている」(:38)といい, 朝井リョウは「本に対する感想の中で、共感できなかった、理解ができず楽しめなかった、というような文章を見つけると、私は少しさみしい気持ちになります。共感とはつまり、本を読む以前の自分と、読んだ後の自分に、何も変化がない状態のことです。心の中にあるモヤモヤをばしっと言い当てられたような文章に出会ったときはもちろん嬉しくなりますが、そうではない文章に出会ったときに、「これは私と違う」という理由だけで受け入れることをやめてしまうのは、とてももったいないことだと思います。」(:146)という.
これはそのまま音楽の聴き方にも当てはまるなと思いながら, 共感しながら(!)読んだのだった.

(山形市のTsuki Cafe, 素敵なお店です)

A Film About Coffee


映画「A Film About Coffee
監督:Brandon Loper / 2014, アメリカ

スペシャルティ珈琲を扱うにあたって映画は, ダイレクトトレードを多くの問題を解決することができる魔法の方法のように取り上げる.
そして農夫らがはじめてエスプレッソを飲む場面を,(多くの農夫らが「はじめて」エスプレッソを飲むという事実はさらっと流しつつ)朗らかな雰囲気を演出し映し出す.
美しい画とともに, いったい珈琲の何を伝えたい映画なのだろうか…と思ってしまう (映画のタイトルが「The」ではなく「A」なのは, 珈琲の一側面を伝えているにすぎないという宣言なのだろうか).
最後まで映画のメッセージはよく分からなかった.

美しい映像として印象的だったのは, 終盤に登場する「大坊珈琲店」の大坊さんが珈琲を淹れるシーン (お店は残念ながら2013年の末に閉店).
丁寧に一杯の珈琲を淹れる姿が映し出される.
それは茶の湯に通じる心.
飲むその人を想う心がひしひしと伝わる, 丁寧な仕事ぶりが印象的だった.

…と, そんなことを言いつつ, 映画に登場するコーヒー店では代々木の「Fuglen」にしかまだ行ったことがない (しかもそれもだいぶ前のこと…).
縁側で珈琲をほっこりと飲んでいる画が印象的だった「OMOTESANDO KOFFEE」にまずは行ってみたいなぁと思って調べてみたら, こちらも残念ながら閉店….
気を取り直して, 姉妹店の「TORANOMON KOFFEE」を訪ねてみようと思います.

(写真は久しぶりの天童市・腰掛庵の「だだわらび」(いちごわらびも柚子も, そしてわらび饅頭もどれも美味しい). ずんだが美味しくて, するっと食べちゃいます)

2/21/2016

山響 ユアタウンコンサート・南陽公演


山形交響楽団 ユアタウンコンサート:南陽公演(ホールオープニング記念)
2016.02.21, 1600 / 南陽市文化会館大ホール

山響の南陽コンサート.
新しい南陽のホール, 席に座ると入ってくる光景は360 木のナチュラルな色.
とてもあたたかい雰囲気だ.

演奏前のプレトークでは, 世界最大の木造ホール(キャパ1403)としてこのホールが(ヘルシンキのホールを抜いて)ギネスへ登録されたことなどが話される.
飯森さんと事務局長の楽しいトーク.
新ホールには設計の段階から飯森さんが関わっていたのだという.

南陽市長のあいさつ(!)に続いて, 今日の1曲目はモーツァルト「交響曲 1 変ホ長調 K.16.
モーツァルト8歳のときの作品.
ステージ上には演奏者の椅子がない (対面配置, 中央・雛段最上段がコントラバス).
モーツァルトの時代, オケは少人数であり, 立って演奏することもままあったのだという.
今日は当時のスタイルで, 立って演奏するとプレトークで説明があった.
今日のコンマスは高橋和貴.
オリジナル楽器のために2音でチューニングする光景も耳慣れたものになってきている.
第一楽章はやわらかく, 明るい響きでスタート.
飯森さんも指揮台・譜面台・タクト無しで振る.
どこか素朴な響きが微笑ましい.
続く第二楽章はさらに素朴.
短調の響きが哀愁漂う.
ラスト第三楽章は力強くスタートして駆け抜けた.
なんとも爽快な演奏だった.

2曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲 2 ハ短調 作品18.
ソリストは高橋優介, 22.
一昨年に東京でチャイコフスキーで飯森さんと共演したのだという.
その時の彼のパワーと純粋さのバランスが素晴らしく, 今回の共演となったとの話がプレトークであった.
登場したピアニストは小柄で長髪.
礼儀正しくお辞儀をし, 静かに弾き始めた.
第一楽章は大きな波が次々とうねり, ぶつかり, 飛沫が上がる.
ピアノの音がはっきりと力強く, 素晴らしい.
オケもいい (後半のHnsolobravo).
まさに疾風怒涛, その外見からは想像がつかない力強いplayで弾き切った.
第二楽章は吸い込まれそうになるPfの潤んだアルペジオがいい.
そしてClsoloが秀逸.
うっとり, とろける.
Pfのカデンツァはソステヌートペダルでトリルの響きを唸らせた.
ラストの弦のメロディも過剰に歌いすぎることなく切なさを携えていて, とても素敵だった.
第三楽章はなんといっても変幻自在なPfが印象的.
少し速めのテンポで嵐のように駆け抜けたかと思えば, 儚く切なく上空で歌う.
これはすごいピアニストになりそうで楽しみ.

演奏後 鼻血が出てしまって, ティッシュを詰めながら(!)弾いてくれたアンコールはカプースチン(8つの演奏会エチュードop.40 2番「夢」)!
それをあんなに軽々と弾かれてしまい (しかも鼻血を出しながら(笑)…), 圧巻の演奏.
客席の反応ももの凄く, 度重なるカーテンコールで, 団員がはけるまで拍手は鳴り止まなかった.

休憩を挟んで3曲目はベートーヴェン「交響曲 5 ハ短調「運目」作品67.
昨年まで9年をかけてモーツァルトの全曲を演奏した山響.
今年はベートーヴェンの全曲をやるのだという.
モーツァルト演奏会の際にも使ったオリジナル楽器で, 19世紀初頭の響きを再現してみようと思っている, とプレトークで話があった.
第一楽章は少し速めのテンポで前へ前へと進んで行く仕方.
力強く振るマエストロと, 吠えるHnが印象的.
第二楽章は前半冒頭のVcVaのアンサンブルが美しい.
そこから紡ぎだされる音楽は, どんどん拡がっていく様が目に見えるようにゴージャス.
ラストは力強く終止した.
第三楽章は強奏と弱奏を厳密に対比させることで力強い音楽と昂揚感をつくる.
そして音楽はアタッカで第四楽章へ.
今日聴いて思ったが, これは天上の祝祭の音楽だ.
なんとも華やかな演奏だった.
きっと19世紀の人々もこの響き耳にして心を高ぶらせたのだろう.

最後に飯森さんから「みなさんにホールを育てていってほしい」とあいさつがあって, コンサートは18時過ぎに終演.
なんともあたたかく, 心に残る音楽会だった.

(写真はREPACO米沢店の「純米生ショコラ」. 甘い…)