3/27/2012

ものすごくうるさくてありえないほど近い



映画「ものすごくうるさくてありえないほど近い」
スティーブン・ダルドリー監督

9.11から〇年, , 大きな喪失に区切りをつける大人たち.
それは, 空っぽの箱を埋めて父親の葬式を挙げた母親への反抗に繋がる.
もちろんそれは生きる術であるわけだけれど, 時間の流れの感じ方はとてもプライベートなものだから, 少年(息子)にとってあのときの出来事はいつまでもすぐそこにあって, 耳から離れない出来事のままだ.
たとえタイムマシンが来ないことなんてわかっているとしても, 少年は父親にもう一度会いたいと思い続けているのだった (電話を取られなかった罪悪感とともに…).

そんな息子を, 家族はそれぞれのやり方で愛する.
そっと息子を見守り続ける母親, 孫の背中を押す祖父, いつも味方の祖母, そして, 自分の最期の時に息子への言葉を残した父親….
その愛情はどれもとてもいとおしく, 切ない.

そんなたくさんの愛を突然奪ったテロという理不尽, そして喪失感.
この作品は, その切なさとやり切れなさ, そして少年を包み込むたっぷりの愛情とが同居するお話である.

なんといっても, 息子・オスカーを演じたトーマス・ホーンの演技が印象的だった.
真っ直ぐな瞳と話し方で, その意志の強さを表現していた.
その他の登場人物も, 微妙な心理を納得のやり方でそれぞれに演じ切っていた.

さて,「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Extremely loud and incredibly close)とはいったいなんのことだろう.
耳を塞ぎたくなるような出来事が, すぐそこで起こるかもしれないということなのだろうか.
それとも, 世界を変えること(ブランコをこぎ出すこと)はちょっとした勇気で始められる, ということなのだろうか.

いずれにしても, どんな状況にも決して負けない強さを, 少年は観るものに行動をもって示すのだった.