綿矢りさ (2015). ウォーク・イン・クローゼット. 講談社.
key words:幼馴染, きれいな服
「いなか、の、すとーかー」と「ウォーク・イン・クローゼット」の2本が収められている.
「いなか、の、すとーかー」は20代なかばの新進陶芸家「おれ(透)」と, 砂原と果穂 ふたりの女ストーカーの話.
郷里の小椚村へ戻ってきて窯を開いた主人公は, ストーカーの女に勝手に工房の中でろくろを回されたり
(:27), 窓を割られ「ポストには山で集めてきたと思われるさまざまな虫の死骸」を入れられたり(:53)する.
ストーカーのやり方はホラー映画を観ているかのうように恐ろしく, 執拗で, 読んでいて怒りを覚える.
実はストーカーはふたりいて (見るからに怪しい砂原意外にもう一人いて), そのもうひとりが幼馴染の果穂であろうことは中盤あたりで読み手には分かってしまうが
(おれと関係ある女はふたりしか登場しない), 「おれを愛しながら憎んでいる」果穂の本性が現れ(:101)暴れるシーンはやはり不気味で恐ろしかった.
物語のラスト, 主人公の陶芸家は壮絶な出来事をさまざま経て, 自分にとっての作品と確かに向き合い,「しっかりと自分の真ん中に慎が通った」(:120)と感じる.
そして, 作品作りに専念することを誓うのだった.
「ウォーク・イン・クローゼット」は28歳のOL早希と幼馴染の人気タレント だりあ の話.
休日に自分の服を丁寧に洗濯することが趣味・特技である早希は, 既婚者である(と分かった)紀井に騙されていた自分に失望する
(:153).
一方, だりあ は父親のいない子を身篭っていることを週刊誌にスクープされてしまい, 事務所の圧力や記者から逃れながらも, 「この子を苦労させないためなら、どんな仕事だってがんばれる」(:212)と思う.
物語のラスト, 無事に出産した だりあ からたくさんの服を譲り受けた早希は, それらの服をいつか着こなしてみせようと, 気持ちを新たに前を向くのだった
(:248).
彼女らにとって, いつでも「きれいな服は戦闘服」(:136)なのだ.
この二作もそうだが, 印象的な一文でスタートするのは綿矢作品の特徴だと思っている.
インパクト強く始まり, 最後まで疾走するスピード感を味わうことができる.
(上の写真は仙台三越・7階の「サロン・デュ・ショコラ」(すごい人!)で寄ったテオブロマ. 今日はトークショーに土屋さんも来ていたらしいです. Matsuricaでいただいてきたブレンドと合わせて…, あぁ幸せ. テオブロマ, 奥渋チョコレート ハチ(オススメらしいです)の犬のイラストがかわいい…)
(そして下の写真は喧噪を抜け出して行った国分町・海老そばえびすけのえびそば (細麺). 海老好きにはたまりません)