酒井順子 (2015). 気付くのが遅すぎて、. 講談社.
key words:獅子舞系の若者, 切り取られる「その時」
「週刊現代」の2015年6月6日号から2015年の6月27日号までの連載から50本が収められている.
日々の生活から時代を切り取る眼力に, 次々とページをめくりながら面白く読んだ.
たとえば酒井は, 今の若者達が積極的にヒッチハイクをしている理由を, ネットの出現によって他者と知り合うハードルが低くなったことに求めたり
(:134), 駅での暴力事件が増えていることに触れ, それを「ネットで思うがままに感情を爆発させている人の増加」と関連付けてみたり
(:190), 「産んでくれてありがとう」発言をするプロ野球選手たちを, 「ただ「何言っていいかわからないし、とりあえず」と、叫んだのではないか」(:249)と論破したりする.
また, グーグルやアマゾン的な会社に就職する, リアル社会でのコミュニケーション能力も高く, お獅子のように物怖じをせずいつも笑顔の若者を「獅子舞的若者」と命名してみたり(:222)もする.
読んでいてなんとも小気味いい文章が続く.
あとがきで酒井は, 「そんなわけで本書に記されているのは、細かい部分ばかりが見えてしまう私の、日々思うこと、体験したこと」(:253)なのだと書く.
そして, それらの「その時」を切り取る作業において, 「何を書こうかと毎週考えるのは、楽しい作業です」という
(:同).
その楽しさが, 読んでいるこちらにも伝わってくる一冊だった.