6/13/2016

齋藤孝 語彙力こそが教養である


齋藤孝 (2015). 語彙力こそが教養である. 角川新書.

key word:坊ちゃんの音読

「日本語の90%を理解するために必要な語彙数は、およそ1万語と言われています。ところが、諸外国を見てみると、ケタが違う。英語は日本語の3分の1にも満たない3000語、スペイン語やフランス語にいたっては2000語足らずで、その言語を90%理解できるのです。」(21), と筆者は日本語の語彙の多さを指摘することからはじめる.

本書で筆者が述べる主張は一貫して, 「語彙とは「教養」そのものである。しかもその「教養」は、会話の表現力や説明力に直結し、一瞬にして自分の知的レベルを映し出す。」(:25)というものだ.
その教養を豊かにすべく, 本書では語彙へのアンテナを高める方法(:41-)や語彙力を鍛えるためのインプット方法 (52-), インプットした語彙をアウトプットする方法(138-)などが紹介される.

そのなかで筆者が推奨するのが, 夏目漱石作品の音読(:160-)だ.
本書で紹介される「小学生と6時間かけて『坊ちゃん』を一文字残らず一気に音読するという、まさに前例のない授業」(:161)や, 「自分が文章を書くときに調子が悪いと、「音痴」だと感じる。それを調整するためには、漱石を音読する。すると、音痴が治るのだ」という古井由吉さんとの対談エピソード(:170)は興味深かった.

本書の終盤には「押さえておきたい敬語表現」や「断るときの文章」(217), 間違いが多い表現 (222-223), 読み方のご用例(223-225)などもまとめられている.
実践的・実用的な内容が多く含まれた一冊.

(写真は米沢市「シャトレー」のメロンのショートケーキ. この幸せが250円だなんて安すぎます)