木皿泉 (2013). 昨夜のカレー、明日のパン. 河出書房新書.
key words:パワースポット (惣菜屋), 岩井君用の(客用)食器
夫である一樹を失ったテツコは, 一樹の父, つまり「ギフ」と二人で暮らしている.
そんな二人の生活は, ほかから見れば奇妙なものだ
(:16).
だが, この二人の暮らしは, とてもあたたかく愛に満ちているのだ.
二人は, それぞれ自分が変わってしまうのが怖いと思っている.
世の中がどんどん一樹のいないことに慣れていくなか, 自分も「本当に一樹を忘れてしまったら、どうしよう」(:128)とテツコは不安になる.
ギフの方もまた, 「ずっと変わりなく、このままでやってゆきたい」(:217)と思っている.
その一方で, ギフは知っている.
「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」(:225)と.
読み手は, テツコの側にいる人間がこんな風に言えるギフでよかったと, そう思うのだった.
物語の最後, 一樹とテツコが初めて出会う場面が描かれる.
本書のタイトルの秘密が明らかにされる場面でもあるのだが
(:233), 手を伸ばす一樹の生き生きとした表情が目に浮かぶようで, 印象的なエンディングだった.
(写真は, 今日あそびに行って来た 喜多方・日中線記念自転車歩行者道のしだれ桜(満開!)と, 「田楽喫茶 豆〇」のこんにゃく田楽)