4/30/2016

西加奈子 まにまに


西加奈子 (2015). まにまに. KADOKAWA.

key word:私はこれからも、ずっとこのからで生きてゆく。(:264

西加奈子の6年分のエッセイ集だという.
タイトルの「まにまに」には, 「合間に、適当に」, あるいは「なりゆきにまかせる」という意味があるらしい (「あとがき」(:264)より).

1章「日々のこと」では, 彼女が日々観察し思うことが, 軽妙な文体で小気味よく綴られる.
印象的だったのは「土地が作る」(:142-143)という一本.
プラハに生まれた作家ミラン・クンデラ(「存在の耐えられない軽さ」など)がプラハと共にあることに触れ, ハバナとヘミングウェイ, あるいは青森と太宰治とについて考え, 「その土地の言葉を使っていなくとも、その土地のことを書いていなくても、この土地だったからこそ生まれた作家たち」(:143)というのだった.
すっと共感できる文章だったのだ.

2章「音楽のこと」では, 彼女の音楽に対する造詣の深さが存分に分かる.
特に, オーガスタ・パブロのことが綴られた「すべての楽器は」(:209-212)が印象的.
彼のメロディカに触れて, 彼女の「ピアニカ観」が変わった様が滑稽に書かれる.
ピアニカを「格好悪い楽器」だと思っていた(:210)彼女をして, 最後には「今なら言える。その中に、格好悪い楽器なんてひとつもない。体から音を出し、その音で誰かを高ぶらせ、慰める楽器は、おしなべて尊く、美しく、格好いいのだ。」(:211)と言わしめたパブロの衝撃の大きさがうかがえる文章だった.

3章「本のこと」では, 毎日新聞夕刊に掲載された文章が綴られる.
彼女に紹介されると, その本を読んでいないことが人生の一大事, もの凄くもったいないことのように思えて, すぐにでもそれらを読んでみたくなるのだった.

文章とともに収められている筆者自身による可愛らしいイラストの数々も魅力的.
まにまに, 散歩をするような一冊.

(上の写真は昨日お邪魔した福島市・自家焙煎珈琲「椏久里」. すっきりしたコーヒーがとっても美味しい. そして下の写真は今日お邪魔した福島駅前「SAKAMOTO COFFEE. 福島は美味しい珈琲屋さんがたくさんあって素敵)


4/27/2016

Andras Schiff Six Partitas


Andras Schiff Six Partitas
2009.08.28 / ECM 2001/02

シフによるパルティータ全集.

なんとも心地よいピアノの音色には, シフの技術に加えて, レコーディングの技術の高さもあるのだろうか.
透きとおった, とても心地よい響きで聴くことができる.

特筆すべきは曲順である.
1番の静かで可愛らしいプレリュードからではなく, 5番の行儀のよいプレリュードから始まり, そして3, 1, 2, 4, 6, と続く.
この流れが面白い.

どの演奏の解釈も文字通り楽しくワクワクさせられるが, 1枚目のdisc最後に収録されている, 2番のカプリチオの自由自在な様子に特に魅了された.

4/24/2016

盛岡②+北上

「でんでんむしバス」(!)でバスセンターへ (道中 見えた裁判所前の石割桜は散りはじめ…).

ずっと気になっていた「いなだ珈琲舎」へ.
モーニングSet.
珈琲(Kブレンド)も, 厚切りトーストもとっても美味しい.
素敵なお店.

紺屋町を散歩.
なぜか懐かしい街並み.
川沿いは光を浴びて水も緑もキラキラ.
のんびり.

盛岡駅から「やまびこ」で北上へ.
北上駅からタクシーで「トロイカ」へ.
一度行ってみたかったロシア料理のお店.
ボルシチもピロシキも(そしてもちろんチーズケーキも)美味しかったけど, この(↑)ロールキャベツが美味しかった!
チーズとホワイトソースをたっぷりかけてオーブンで焼いたもの (スメタナソースが何かは分からず…).

駅に戻って, 高カロリーランチを消費すべく, 渡し舟乗り場へと歩く.
乗り場からは, 舟に乗って5分くらいで対岸へ.

北上展勝地.
残念ながら, 桜は…, 七割方 散ってしまっていました….
今年の桜はどこもホントに早い.
強い風に舞う桜吹雪が綺麗でした.
川沿い一面が桜並木になっていて, これは満開だったらさぞかし綺麗だったろうなぁ.
北上川に吊るされたたくさんの鯉のぼりが風に靡いて, 次の季節の到来を告げているようでした.


4/23/2016

弘前②+盛岡①

, 「虹のマート」で色々と買って朝ごはん.
美味しかったのは, これ! イガメンチ!
お好み焼きのような感じでした.

弘前公園到着.
桜は満開!

東門から中へ入って, 本丸へ.
天守閣が曳屋によって移動したお城.
70日で77.62mの距離を曳いたんだそう.
すごいなぁ.

武徳殿休憩所, 桜のトンネルと廻って, 西濠のボート乗り場へ.
ボートを漕ぐのはなかなか難しい….

りんごの形の味噌おでん.
生姜の効いた甘いお味噌が美味しい.

与力番所でお抹茶をいただく.
公園だけで一日 十分に楽しめる場所.

内濠から石垣を見ると, 確かに一部 膨らんでいる!
これを直すのか….

屋台会場はすごい人!
三忠食堂に並んで, 津軽そばをいただく.
そばがきを寝かせて作るという そばは, 歯が無くても食べられそうな軟らかさ….

すれ違う人が大勢 手に持っていた黒こんにゃく ().
真っ黒(醤油)でした.

植物園でゆっくりしてから, 公園を後にする.

公園近くの喫茶店「北奥舎」.
寺山修司と太宰治の本がたくさん置いてある素敵なお店.

ターミナルへ戻って, 「ヨーデル号」(!)へ乗車.
いざ, 盛岡へ.

盛岡着.
早速, 好古(大通り店)へ.
てばが絶品.
盛り合わせだけ食べて, もう一軒はしご.
食道園の冷麺 (別辛).
後乗せのカクテキがピリっと美味しい.
ぺろっと食べてしまいました.

4/22/2016

弘前①

仙台から高速バス「キャッスル号」で弘前へ.
23弘前バスターミナルへ到着.


真っ直ぐホテルに向かって, 今日はすぐに就寝

4/21/2016

綿矢りさ 大地のゲーム


綿矢りさ (2013). 大地のゲーム. 新潮社.

key word:大地の賭けに乗る。

舞台は, おそらく50100年先の未来.
未曾有の大震災が街を襲い (おそらく日本の首都・東京か), そしてまた一年以内に巨大な地震が来るといわれている (30).
登場人物たちは, そんななか次の地震に身構えつつ大学内で共同生活を送る主人公の私をはじめとする大学生だ.
彼女ら・彼らは「反宇宙派」と名付けられたグループに所属しており, デモや集会を開いて活動している.
学生らの期待を一身にあつめているカリスマ的な存在が, リーダーと呼ばれる男である.

物語は, 私(恋人がいつつもリーダーの魅力に惹かれてしまう)と, 私の男 (リーダーを気にしている私に気付いている), リーダー, そしてマリという不思議な女(リーダーに近づき,
私に嫉妬させる存在)を中心に展開していく.
登場人物にはほとんど名前が付けられていない.
時代も場所も, 厳密には分からない.
(綿矢りさの作品には珍しく, 親近感を持てない一般名詞の人物たちによる, 未来の話だ)

「世界の割れる音を聞いてしまった」(:61)私たちは, それでも生き残ったことへの誇りと戸惑いを背負って生きている.
脆く危うい彼ら・彼女らの人間関係は, ある日 起こった「ニムラ」という男子学生の集団リンチ事件によってその均衡を崩すことになる.
そこでもリーダー性を発揮し集団をまとめたのはリーダーだった.
その一方で, 物語はその裏側にあった巧妙な政治を暴いていく.

やがて, 政府の予告どおり2度目の大地震が大学を襲う (144-).
ここから物語はエンディングへと向けて加速していく.
この場面が手に汗握るスピード感で描かれ, 思わず惹きこまれる.

終盤, 小説の話し手が突然 主人公の私からリーダーへと代わり, 彼の本性が分かる場面がある (149-).
最後の最後に, 劇的なスイッチ・チェンジ.
「じっくりと時間をかけて手に入れようとしていた大学が崩れてゆく」(:152)様を彼の視線から描写する場面は, まるで演劇を観ているかのようだった.

物語はラスト, 人間の逞しさと, 誰かが側にいてくれることのありがたさを描く.
子どものころ, 最後はみんな死ぬんだぞと兄に言われ怖くて泣いていた少女は, 「私は土に還りたい。大地の一部になって、また新しく命の生まれる瞬間を、黙って見守っていたい」(:166)という大人になっていたのだった.
どんな災難に襲われようとも, 何度でも立ち上がる人間の姿が描かれる.
作品タイトルから, もっと人智の及ばないところでの終止を覚悟していたので, ちょっと意外なエンディングだった.

(写真は福島駅前の「伏見珈琲店」. 去年の5月にオープンした, カウンターだけの素敵なお店. ブレンドとエキゾチック(という名のフルーツがたくさん入ったロールケーキ)をいただきました)

(↓リンクは文庫本です)

4/16/2016

木皿泉 昨夜のカレー、明日のパン



木皿泉 (2013). 昨夜のカレー、明日のパン. 河出書房新書.

key words:パワースポット (惣菜屋), 岩井君用の(客用)食器

夫である一樹を失ったテツコは, 一樹の父, つまり「ギフ」と二人で暮らしている.
そんな二人の生活は, ほかから見れば奇妙なものだ (16).
だが, この二人の暮らしは, とてもあたたかく愛に満ちているのだ.

二人は, それぞれ自分が変わってしまうのが怖いと思っている.
世の中がどんどん一樹のいないことに慣れていくなか, 自分も「本当に一樹を忘れてしまったら、どうしよう」(:128)とテツコは不安になる.
ギフの方もまた, 「ずっと変わりなく、このままでやってゆきたい」(:217)と思っている.
その一方で, ギフは知っている.
「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」(:225)と.
読み手は, テツコの側にいる人間がこんな風に言えるギフでよかったと, そう思うのだった.

物語の最後, 一樹とテツコが初めて出会う場面が描かれる.
本書のタイトルの秘密が明らかにされる場面でもあるのだが (233), 手を伸ばす一樹の生き生きとした表情が目に浮かぶようで, 印象的なエンディングだった.

(写真は, 今日あそびに行って来た 喜多方・日中線記念自転車歩行者道のしだれ桜(満開!)と, 「田楽喫茶 豆〇」のこんにゃく田楽)

↓リンクは文庫本です

4/11/2016

「男群」コンサートツアー 2016 Ver. 春



打楽器集団「男群」コンサートツアー 2016 Ver.
2016.04.11, 18 : 30 start / 山形市中央公民館ホール

開演時間になると, 会場の四隅から色々な楽器を鳴らしながら6人のメンバーが登場.
ボディー・パーカッションのアンサンブルを経て, そのまま「マンボメドレー」がスタートした.
最初から会場を巻き込んで盛り上がる.

男群は結成17年目となる打楽器集団.
2014年には大阪国際室内楽コンクール&フェスタにおいて日本人史上初の入賞を果たしている.
今日は東北・北海道と行くツアーの初日だという.
楽しいMCや楽器紹介(マリンバの組み立て方も!)を挟んで, ライヴはテンポよく進んで行った.

「アンダーソンメドレー」に続いて, 山澤洋之が門下生の卒業に寄せて書いたという鍵盤三重奏「河は流れ、松そびゆ。樫がその実を大きくするまで:Festive song for the future」が演奏される.
空間に拡がっていく音が素敵な一曲.

続いて笠井亮作曲「Hello, my friend.
3台のマリンバを使ったマリンバ4重奏曲.
繊細で美しい響き.

前半最後は「BOLER"O"-gun:男群的ボレロ」.
スネアとマリンバでスタートした音楽は, 途中ジャンベやバラフォンが加わり, 妖しい世界になる.
さらに, しゃもじのリズムの上でカズーとスライドホイッスルによるメロディーが可愛らしく奏でられるのだった.

15分の休憩を挟んで, 後半は「Electric Grass」から.
スピード感あふれるスタート.

その後は一転, しっとりと「月の光」, ジャジーに「My Favorite Things, そしてラテンのリズムに乗った妖しい「幻想即興曲」(ショパン)が続けて奏でられた.
アレンジの妙を味わえるのも男群の魅力のひとつである.
今回のライヴでも存分にその魅力を味わえた.

パーカッションとドラムのフリーセッションを挟んで, ラストは「River Dance」より「Firedance」と「Riverdance.
10年以上レパートリーにしているという2.
息のあったアンサンブルを聴かせた.

最後までたっぷり, 会場を巻き込んだ6人だった.

(写真は一昨日行った宮城県柴田町・船岡城址公園の桜(町中すごい数の桜!)と, その前に寄った福島市飯坂「cafe HIRANAGA」でいただいたホットドッグ. しっかりとしたパンが美味しかったです)