西加奈子 (2015). まにまに. KADOKAWA.
key word:私はこれからも、ずっとこのからで生きてゆく。(:264)
西加奈子の6年分のエッセイ集だという.
タイトルの「まにまに」には, 「合間に、適当に」, あるいは「なりゆきにまかせる」という意味があるらしい
(「あとがき」(:264)より).
第1章「日々のこと」では, 彼女が日々観察し思うことが, 軽妙な文体で小気味よく綴られる.
印象的だったのは「土地が作る」(:142-143)という一本.
プラハに生まれた作家ミラン・クンデラ(「存在の耐えられない軽さ」など)がプラハと共にあることに触れ, ハバナとヘミングウェイ, あるいは青森と太宰治とについて考え, 「その土地の言葉を使っていなくとも、その土地のことを書いていなくても、この土地だったからこそ生まれた作家たち」(:143)というのだった.
すっと共感できる文章だったのだ.
第2章「音楽のこと」では, 彼女の音楽に対する造詣の深さが存分に分かる.
特に, オーガスタ・パブロのことが綴られた「すべての楽器は」(:209-212)が印象的.
彼のメロディカに触れて, 彼女の「ピアニカ観」が変わった様が滑稽に書かれる.
ピアニカを「格好悪い楽器」だと思っていた(:210)彼女をして, 最後には「今なら言える。その中に、格好悪い楽器なんてひとつもない。体から音を出し、その音で誰かを高ぶらせ、慰める楽器は、おしなべて尊く、美しく、格好いいのだ。」(:211)と言わしめたパブロの衝撃の大きさがうかがえる文章だった.
第3章「本のこと」では, 毎日新聞夕刊に掲載された文章が綴られる.
彼女に紹介されると, その本を読んでいないことが人生の一大事, もの凄くもったいないことのように思えて, すぐにでもそれらを読んでみたくなるのだった.
文章とともに収められている筆者自身による可愛らしいイラストの数々も魅力的.
まにまに, 散歩をするような一冊.
(上の写真は昨日お邪魔した福島市・自家焙煎珈琲「椏久里」. すっきりしたコーヒーがとっても美味しい. そして下の写真は今日お邪魔した福島駅前「SAKAMOTO COFFEE」. 福島は美味しい珈琲屋さんがたくさんあって素敵)