3/07/2015

サロネン×フィルハーモニア管



エサ=ペッカ・サロネン×フィルハーモニア管弦楽団 2015年日本公演
2015.03.07. 2 pm start / 東京芸術劇場コンサートホール

初めて訪れた芸劇で, 初めてのサロネン×フィルハーモニア管.
3階・上手側のバルコニー席で聴いた.

1曲目はシベリウス「トゥオネラの白鳥」 (「レンミンカイネン組曲」op.22より第2).
次第に弦が湧き上がる冒頭部はまさに黄泉の国.
最初から惹きつけられる.
タクトを持たず, 音を紡ぎだすかのように始めたサロネン.
そこに歌われる白鳥の哀歌(イングリッシュホルン)が切ない.
さらに, 移り変わる弦のハーモニーが色彩豊かでbravi
弦は後半(timpが先導して舵取りをするなか, その上で哀歌をうたう場面)も絶品で, 本当に心地よかった.
儚く, 切なく, そして美しい演奏だった.

2曲目はブラームス「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77.
ソリストはヒラリー・ハーン.
力強く開始された第一楽章は, 隅々まで美しい.
ソリストと対話しながら音楽を進めていくサロネン.
彼自身がオケであるかのようにうたう.
第二楽章はobsolo vnが素晴らしかった.
それにしてもヒラリー・ハーンの音の美しいこと!
ミスもなく正確なうえに, (それなのに) 柔らかくあたたかく歌い上げられるヴァイオリン.
弦セクションの美しさに, solo vnが包まれて最高だった.
第三楽章は軽快に, 細部のやりとりまではっきりと聴かせるやり方.
歌い上げる部分とリズミカルな部分のコントラストも明確で, すっきりと心地よい.
ラストは快走し, 力強く終わった.

カーテン・コールに応えて演奏されたヒラリー・ハーンのアンコールは, バッハのパルティータ3.
祈りのアリア.
弱奏部の音色が美しい (吸い込まれるよう…), しっとりした演奏.
完璧な演奏, 安心して流れに身を委ねながら聴いた.

休憩を挟んで, 本日のメインはベートーヴェン「交響曲 3 変ホ長調 op.55.
オリジナル楽器はtimptp.
指揮台に上がるやいなや, 颯爽と振りはじめたサロネン.
軽快で心地よい第一楽章.
音が生き生きとして瑞々しい.
第二楽章はvnの葬送行進曲が切ない.
なんとも哀愁のある音で惹きつけられる.
それに対して, 底抜けに明るい第二主題とのコントラストが見事 (それはまるで一夜の夢のよう…).
第三楽章はオシャレで清潔.
hnのファンファーレも高らかに響いた.
ほぼアタッカで始まった第四楽章は疾走感あふれるスタート.
インターロッケンの音遊びを楽しんでいるような冒頭部の指揮者が印象的だった.
自然な流れのなか, 心地よく伸び縮みし何度も花火が打ち上がりながら音楽は進んでいく.
こんなベートーヴェンは正直 聴いたことがない.
エロイカってこんなにいい曲だったのか, と思ったが, すぐにそれはベートーヴェンの巧妙な仕掛けを緻密に炙り出したサロネンが素晴らしいんだ, と思い直す.
長時間の音楽会だったが, 存分に楽しめた.

アンコールはシベリウス「悲しきワルツ」.
冒頭の弦楽合奏が夢の世界のように美しい (あの厚みはいったい何なのだろうか. めちゃくちゃ気持ちよかった).
自在に伸び縮みするオシャレな演奏.
そこに重なるソリスティックな管楽器も素敵だった.

パンフレットで「私の役目は、「同輩中の首席」として、一緒に仕事をする優秀なプレイヤーたちに、刺激、アイデア、コンセプトを与えることだと感じています。」と述べていたサロネン.
オケとの信頼関係が伺える, 一体感のある演奏だった (サロネンが開発に携わったアプリ「オーケストラ」もとってもcoool).

終演は1630
その後のサイン会の長蛇の列をみても, サロネンの人気を存分に感じた一日だった