世界が食べられなくなる日
監督 / Jean-Paul Jaud(ジャン=ポール・ジョー)(2012年・フランス)
監督 / Jean-Paul Jaud(ジャン=ポール・ジョー)(2012年・フランス)
「ヨーロッパ某所の研究所」, のスーパーとともに, 映画は怪しげな実験施設の映像から始まる.
前半はGM作物(遺伝子組み換え食品)と農薬を与えたラットがどうなるか調査した長期実験について (農薬をどんなにかけても枯れないGM作物は大量の農薬とセットで食卓へ運ばれて来る).
それまで, 3か月ほどの短期的な実験結果しか公表されていなかったものを, 通常のラットの平均寿命に当たる2年間という年月をかけて追ったこの実験では, 3か月間ではその影響がほとんど見られないが, 2年間では通常の3~4倍の腫瘍発生率・死亡率がみられるようになった, という結果が報告される.
腫瘍で膨れ上がったラットは見るからに痛々しい.
映画の後半では, 福島第一原発事故以降の日本の農業について紹介される.
遺伝子組み換え技術と同じく, 眼には見えない(そしてその裏に世界の富の半分を占める巨大企業の影がある)原子力エネルギーの技術により汚染された農作物の数々.
世界第3位の原子炉保有国, 日本.
映画ではチェルノブイリの状況も紹介されるが, 今回の原発事故も同様, その影響が出てくるのはまだまだこれからなのだろう.
これらの悲惨な状況の裏側で紹介されるのが, セネガルのカイダラ・アグロエコロジー農業学校での取り組みだ.
自分たちで種を大事に育て次代に繋いでいくこと, そうしてGM作物の侵入を阻止することの大切さがこの学校では繰り返し教えられる.
さらに, 映画ではセネガルと日本, 二つの国の太鼓の演奏がところどころに散りばめられる.
大地にどっしりと足を着いて打ち鳴らされる太鼓.
それはそのまま生き物の大切さ, 生命の尊さを体現しているようで, 力強く, 逞しい光景だった.
映画のラストで紹介される須賀川の農家・樽川美津代さん(原発事故による影響で夫を亡くされた)の, 「これは日本だけの問題ではない, 海も空もつながっているんだから」という言葉が印象的だった.
GM作物の大量輸入国である日本.