9/01/2013

福田美蘭展

 
福田美蘭展
2013.07.23-09.29 / 東京都美術館
 
福田美蘭(1963-)の個展へ.
冬景色に眠る白雪姫が組み込まれた水墨山水, 日の丸がハートに書き換えられた旭日静波(1994).
掛け軸の中にはふつう無い風景を目にして, 最初の展示室から「?」がたくさん飛ぶ.
 
北斎の「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」(1996)は左右が反転させられ, 黒田清輝の「湖畔」(1993)は女性が眺める湖が拡大され, 全く別の印象を受ける.
福田の手にかかれば古典のイメージはアクロバティックにガラっと変わる.
 
モナリザはベンチに横たわって休憩中だ.
スザンヌの静物画はマジックで丁寧に添削されているし, レンブラントは壁にドラえもんを描いて満足げだ.
 
さらに福田は, 観る方へもそのスタンスについて投げかける.
観たい人が自分で開けて観る作品(「開ける絵」)があれば, 床に置かれた古典風の絵画はその上を土足で歩くことができる (「床に置く絵」).
 
そして, 若いころから社会的な問題に強い関心を持っていた福田は, 作品の中で時代へのメッセージを発信する.
世界貿易センタービルの爆破に際して, 報復だけを思うブッシュを説得させるべく, 画家は彼にキリストを対峙させる (2002).
綺麗に咲く桜の枝の向こうには, 噴火して山頂を失った後の富士山が描かれる (2005).
作品の中で福田はさらに想像するのだ.
 
展覧会には近年発表された作品も多く展示されている.
2013年の作品では, 山水図の中でトラブルが相次ぐボーイング787機が飛び (その光景は異様で不気味だ), 2011年の大震災を告げる翌日の朝刊一面は滲んで潰れ, 新聞紙ですら怒りと哀しみをあらわにしているようだった.
2010年に亡くなった祖父・林義雄を, 絵本作家である彼の作風で描いた涅槃図も印象的だった.
 
多くの作品が, 観るものを圧倒する.
それでも, 現代においては「現実が想像力をはるかに超える」と彼女はいう.
そんな時代において, 今もなお 福田は絵画の可能性を探り続けているようだ.