5/19/2012

100年インタビュー 小澤征爾 指揮者を語る


100年インタビュー制作班 (2012). 小澤征爾 指揮者を語る:音楽と表現. PHP研究所.

key words:指揮, サイトウ・キネン・オーケストラ

本書は, NHK BSハイビジョンで放送された番組「100年インタビュー/指揮者 小澤征爾」をもとに原稿をつくり, 単行本化したものだという.
NHKによる構成的で誘導的な内容ではあるものの, 指揮者・小澤征爾が語る言葉は経験に裏打ちされていて, とても共感できるものだった.

斎藤秀雄に教わった演奏法や表現法, 音楽の語法などを共有できていること(:66)や, プロオケには珍しく分奏をすること(:77)など, 小澤はサイトウ・キネンのエピソードを多く語る.
そして作品の裏に何があるのかを読むことが演奏家にとっての役目だとした斎藤秀雄の言葉を紹介し, それが「僕たち、斎藤先生の弟子たちの宝になっている」(:85)という.

さらに, 音楽をするにあたって大切なことは解釈した人の人間性が出て来ることであって (95), そのためにはたくさんの時間をかけて勉強しなければならない(:103)という.
そうして出会う音楽家同士の人間性をインバイト(118-119)し, 合わせていくのが指揮者の役割なのだ, とも.

一方, 年齢を重ねたことによる音楽に対する変化については, こう語る.

「ピタッと合って、だけど深みの度合いがないよりも、もしかすると合わないかもしれないけれども深みが感じられる、そっちのほうが満足感が得られるんだね、それを聴いている人は。」(:137

「年齢を重ねることを無駄には使っていない」という小澤だが, その音楽にも当然, それまで積み重ねた時間が影響を与えているというわけである.
病気療養の経過が気になるが, 積み重ねられた76歳の音楽を, 是非また聴いてみたいと思っている.

小澤征爾 指揮者を語る (100年インタビュー)