高尾長良 (2013). 肉骨茶. 新潮社.
key words:肉骨茶, 骨
わたし(たち)が小説というものを読む際に, いかに説明を求めていたのか….
そんなことを思い知らされた一冊だった.
ここに書かれているのは, 「描写」であり「説明」ではない.
読み手は, なんだかわからない焦燥感と切迫感に駆られながら, 映画のように次々切り替わっていく画面を観せられていくのだった.
主人公は十七歳、一六〇cmの赤猪子 (:3).
体重は「三五kgでこれは標準体重の六二%だった」(:同).
母親と旅行に参加している彼女は, シンガポールからマレーシアへの乗り換えで, 「赤猪子の友人で赤猪子の私立高校への元留学生だったゾーイー」(:9)と合流し, ツアーから(母親から)抜け出す計画を立てていた.
物語は, そうしてゾーイーと一緒に訪れた彼女の別荘での出来事を描く.
登場人物はこの二人のほかに, ゾーイーの家の運転手アブドゥルと, 彼女の幼馴染である鉱一だ.
拒食症である赤猪子は, 「一昨日の機内食を半分も食べてしまっている」(:41)ことを気にしながら, (彼女・彼らの目があるなか) どうやってそれを解消すべきか, 滑稽なほど さかんに考える.
描かれるのは赤猪子の食べ物へ対する憎悪だ.
このまま赤猪子の食べものに対する憎悪や嫌悪が描き続けられるのかと思っていると, 最後に驚くべき結末が待ち構えている.
物語はラスト, 紘一と仲良くしている赤猪子を目撃し豹変するゾーイーの姿を描く.
「拒食症のくせして。お前のためにどれだけやってあげたと思ってるの?食べたら許してあげる、肉骨茶を全部食べたら」(:114)と, ゾーイーは赤猪子の口に無理やり肉骨茶を押し込むのだった.
その壮絶な場面においてもなお, 「無理な体勢の上下運動に赤猪子の心臓は激しく痛み始めた。だがこれもカロリー消費になる、と考えて赤猪子は安堵した。」(:115)と思考を巡らせる赤猪子には, 滑稽さを通り越して恐怖を覚えた.
最後に残る息切れのような感覚が, (自分のことでありながら) なんとも印象的だった.
(天童からの帰り道, 友人宅へお土産に天童市・ハヤシ菓子店のシューロールを持っていったら, 替わりに千葉のイチゴをたくさんいただきました! 嬉しい~)
※こちらは宮崎県高鍋町から届いた「たまたま」↓