小川洋子 (2007). 夜明けの縁をさ迷う人々. 角川書店.
key words:ビロードのソファー, 関節カスタネット, 喫茶室ルーク, 作家M, サンバカツギ
野生時代の2006年7月号から2007年3月号までに掲載された短編を収めた一冊.
どの物語にも, 小川が描く不思議な世界観が存分に詰まっている.
「三塁側ファールグランドで、いつも逆立ちの練習をしていた曲芸師」(:7)が登場する「曲芸と野球」, 次々と届く受賞祝の品々で埋め尽くされていく部屋で最後に明かされるD子さんの秘密が恐ろしい「教授宅の留守番」, 中華料理店のエレベーターの中で生まれ(:53)エレベーターの中で生きたE.B.のちょっと切ない話「イービーのかなわぬ望み」, 普通の不動産屋とは逆に「物件が求める住人を探す」(:76)不思議な不動産屋の話「お探しの物件」, その涙をすり込むと「どんな楽器でもとたんに音色がよくなる」(:97)不思議な涙の持ち主の(まさに)献身的な愛を描く「涙売り」, 自分の裏側に生きているという(:129)老人との奇跡的な出会いを描く「パラソルチョコレート」, 謎だらけの女ラ・ヴェール嬢と指圧師との交流を描く「ラ・ヴェール嬢」, F銀山の山奥にある不思議な狩猟小屋(:165)に集う奇妙な三人を描く「銀山の狩猟小屋」, そして, 不思議な百三歳の元英語教師(:206)が印象的な「再試合」, 9つの話が収められている.
特に「イービーのかなわぬ望み」と「涙売り」, 「パラソルチョコレート」の3つが好きだった.
読んでいて独特の浮遊感と, ちょっぴりの切なさを味わえる.
(写真は山形市「SOUP Curry spice Picca」の「サックサクジューシー!揚げチキンのスープカレー」(いい名前です(笑)!). 皮がパリパリの鶏肉とゴロッと甘いたくさんの野菜がとっても美味しかったです)
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