9/25/2016

角田光代&井上荒野&江國香織 トークショー


山形県生涯学習センター&山形小説家(ライター)講座コラボ企画
角田光代&井上荒野&江國香織:文学は三者三様-人気女性作家たち大いに語る
2016.09.25, 2 pm start / 遊学館(山形市)

今年で6回目になるというコラボ企画のトークショー.
今年は角田光代&井上荒野&江國香織の三人がゲスト.
司会は山形市在住の文芸評論家・池上冬樹氏.

1部は「何を読む? どう読む? 影響を受けた作品を語る」といった内容.
まずはじめにライター講座的な中身として, 準備されたテキストについての話からスタートした.
テキストは, 池上さんが影響を受けた作品だという森内俊雄の「短篇歳時記」より, 俳句(「ともしびや酢牡蛎と噛みし柚子の種」(永井東門居))をもとにして書かれた, 原稿用紙5枚のエッセイ.
荒野さんの感想は「淡々として滋味深い」, 江國さんは「俳句をもとにエッセイを書くというスタイルが面白い. 自分だったら牡蠣を主人公に書くかも」, 角田さんは「飲み屋でともしびの下ひとり飲んでいるストーリーにするかも」, といったものだった.
池上さんは, とにかく酒が美味そうなのがよくて, この作品が好きなんだという話だった.

続いて, 若いときに影響を受けた作家について話がおよんだ.
角田:太宰治, 内田百閒, 尾崎翠
江國:太宰治, レイモンド・カーヴァー, いしいももこ(翻訳家)
井上:井上光晴 (), 大江健三郎 (初期の短編), レイモンド・カーヴァー, ヘミングウェイ, サリンジャー (ナイン・ストーリーズ), マーガレット・アトウッド
それぞれ上記の作家の名前があがり, これらは繰り返し読む作家とイコールなのだそうだ.

そして, 作家に必要なことは?の質問には,
角田:作品を音読すること(声に出すと, 句読点の不自然さや回りくどい言い回しなどに気が付く)
江國・井上:いっぱい読むこと
ということだった.

さらに, よく耳にする「言葉が言葉を連れてくる」といった現象については,
井上・江國の両氏はあるといい, 角田さんは絶対にないという.
小説を書くにあたってそんなにしっかりとは計画を立てずに書くという井上・江國両氏に対して、しっかり綿密に計画を立ててから書く角田氏の違いが面白かった.

休憩を挟んで第2部は「どう書く? 世界をどう見る? 作家的生活とは?」といった内容について.
「どう書く?」といった質問に対しては,
江國:小説がはじまる前のことを考えてから書くが, あまりきっちりとは考えない.
井上:江國さんよりはもう少し考えるが, 終わりは決めない.
角田:人生ゲームのコマぐらい, ラストまで全部決めてから書く.
, それぞれの書き方の違いを聴くことができた.

また, 「終わりを決めないで書く場合, 実は違う終わり方が存在した可能性はあるのか?」という角田さんの質問に対して, 江國さんが「作者が思い描くストーリーはいくつかあるけれど, 物語が行くべきストーリーはひとつしかない. だから, 作者に出来ることは物語が行くべき場所の邪魔をしないことだ」と答えたのが興味深かった.

終演は1620.
貴重な話をたくさん聴くことができた, とてもゴージャスな時間だった.

(写真は帰りに寄った とんがりビルの屋上から)