第68回全日本合唱コンクール東北支部大会・高等学校部門
2016.09.23 / やまぎんホール(山形市)
午前中はBグループ(33人以上)からスタート.
Bグループには20団体が参加した.
以下, 印象的だった団体についての覚書.
3番, 山形県立鶴岡北高校音楽部(女声40人)は自由曲の2曲目にうたわれた「贈り物」(高階杞一/横山潤子 女声合唱曲集「笑いのコーラス」から)がよかった.
純粋な声で, あつい想いが届けられた.
4番, 岩手県立盛岡第四(だいし)高等学校音楽部混声(42人)がうたったのはプーランクの難曲 (「Un soir de
neige(雪の夜)」).
男声がもう少し安定するとなお
よかったか.
6番, 山形県立山形西高等学校合唱団(女声63人)は, 厚い声で100年という長い時間にしっかりと思いを馳せた自由曲(ラビンドラナート・タゴール(森本達雄)/信長貴富
女声合唱とピアノのための百年後「タゴールの三つの詩」から)がよかった.
7番, 福島県立会津高等学校合唱団は今日の白眉.
男声25人, 女声53人の合唱団で, 課題曲(「角を吹け」:北原白秋/市原俊明
「印象」から)の冒頭(厚い,
一体感のある男声でスタート)から, 色彩感のある響きを聴かせた.
自由曲はPendereckiの「Izhe xeruvimy」(ヘルヴィムの歌).
滲み, 漂うハーモニー.
もの凄いスケール感で迫ってくるff.
その一方で, 消え入るような儚いp.
バスの不思議なドローンの上に複雑なハーモニーが織り重なる様は, まるで細密画を見ているかのよう.
全く違う世界を見せてくれた.
8番, 岩手県立一関第一高等学校・附属中学校音楽部は男声20人, 女声44人の合唱団.
課題曲(コダーイ「Szep konyorges」)に続いて歌われた自由曲はSamuel Barberの「Motetto on words from the book of Job」から2曲.
2曲目の「Job9:16-17(Praise Him)」では2群の合唱団に分かれての掛け合いがあった.
9番, 福島県立安積黎明高等学校合唱団(女声38人)は課題曲「じいちゃん」(まど・みちお/松下耕 「まどさんの詩によるみっつのうた」から)に透明感があってよかった.
ひとつになって, はっきりと聴こえてくる言葉が綺麗.
自由曲は萩原朔太郎/鈴木輝昭の「夢」(萩原朔太郎の詩による女声合唱とピアノのための《内部への月影》より).
スピード感, 熱, 儚さ…, 様々に感情を掻き回すうた声.
小説のページを次々と捲っていくような昂揚感があった.
10番, 青森県立八戸東高等学校音楽部(女声36人)は課題曲「木のように」(星野富弘/なかにしあかね 「悲しみの意味」から)をおしゃれに歌い上げた.
自由曲「治癒」(征矢泰子/森山至貴)もおしゃれに始まったが, その後はスケール感たっぷりに展開された.
休憩を挟んで午前の部後半, 16番, 福島県立郡山高等学校合唱団は男声17人, 女声41人の合唱団.
モンテベルディの課題曲(「Che se tu se'il cor mio」)がまとまりがあってしっくりくる演奏
(午前の部・前半でもこのモンテベルディの課題曲を歌った団体がいくつかあったが, ハーモニーをしっかりと決めるのはなかなか難しい(特に男声)印象だった).
自由曲の「風見鳥」(高田敏子/三善晃
合唱組曲「五つの童画」から)は息をのむ迫力.
難曲を見事に歌い切り, 目の前にその風景が広がるようだった.
19番, 岩手県立盛岡第二高等学校(女声48人)は課題曲(コダーイ「Hegyi
ejszakak Ⅲ」)の雰囲気のある始まり方がよかった.
自由曲は無伴奏女声合唱のための「秋:相聞」(磐媛皇后・額田王/高嶋みどり).
広い荒野を吹く風.
聴くものをどこか違うところへと連れて行った.
20番, 岩手県立盛岡第四高等学校音楽部女声は34人による合唱.
自由曲(鈴木輝昭・二群の童声(女声)合唱とピアノのための「森へ」から
「2nd Scene(地球歳時記'90より)」)に大きな流れがしっかりとあってよかった.
昼食休憩を挟んで, 午後(14:20~)はAグループ(8人以上32人以下)の合唱.
22番, 福島県立安積黎明高等学校合唱団(男声11人, 女声21人の混声)は課題曲(吉行理恵/池辺晋一郎 「Little by
Little」から「むらさきの」)にブレンド感があり安心して聴ける.
自由曲は谷川俊太郎/鈴木輝昭「愛」(混声合唱とピアノのための「もうひとつのかお」から).
こちらも一体感があってとてもよかった.
26番, 岩手県立不来方高等学校音楽部(男声11人, 女声21人の混声)は課題曲(モンテベルディ「Che se tu se'il cor mio」)がB部門のような厚みと安心感があった.
自由曲はバルトークの「Negy Magyar Nepdal」から2曲.
難曲なのに生き生きとした音楽が立ち上がり, 圧巻だった.
27番, 宮城県聖ウルスラ学院英智高等学校合唱部(女声32人)は自由曲(Nagy
Laszlo/Kocsar Miklos「Tuzciterak(火のツィテラ)」)の声がまとまっていていい
(もう少しメリハリがあればなお よかったか…).
36番, 福島県立橘高等学校合唱団(女声26人)は, 課題曲でsopが少しぶら下がってしまうが,
厚みのある合唱を奏でた.
自由曲(与謝野晶子/信長貴富
女声合唱とピアノのための「君死にたまふことなかれ」)はスケール感大きく歌い上げられた.
38番, 福島県立葵高等学校合唱団(女声30人)は, 素朴に優しく歌われた課題曲(「じいちゃん」)がよかった.
自由曲(新川和江/鈴木輝昭
女声合唱とピアノのための組曲「火へのオード」から「1. 終の日のわたしを焼く」)は難曲.
やや集中力が切れてしまった感があったのが残念だったか….
審査の待ち時間, 客席では男子生徒の呼びかけから出場校による合唱のリレーが始まった.
次の学校を指名しながらリレーされていくその様子に, うたはいいなぁ, と思う時間だった.
アットホームで優しい雰囲気なのがとてもいい.
審査結果の発表に先立って, 審査員を代表して千原英喜氏による講評が述べられた.
ppの表現においてもっと熱度や深さが欲しいこと, 瑞々しく新鮮にうたうことの大切さ, などが述べられる.
また, いまは世界中のうたをリアルタイムでうたうことができるが, 世界では様々なことが起きている.
どうか, 心のどこかに祈りの気持ちをもってうたい続け, コンクールを越えた人類愛をもって幸せになって欲しい, とのあたたかい言葉で締めくくられた.
全ての終了は20時 (!).
外は小雨模様だったが, ホールのなかは夜までアツい一日だった.