2016.04.02 - 06.27 / はじまりの美術館(猪苗代町)
最初の展示はワタノハスマイルによる作品の数々.
石巻の渡波小学校の校庭に流れ着いた町のカケラ(瓦礫)から思い思いのオブジェクトを製作した12人の小学生による作品.
材料のひとつひとつに目を向けると切なくなってしまうが, 出来上がった奇想天外な作品の群を目にすると, その自由な発想の数々に作っていたときに聞こえていたであろう子どもたちの声が甦る.
続いて, 近藤柚子「70億面体のワニの脳」.
渦巻いて, 滲んで, 触発しあって, そうして繋がっていく色とりどりの線と線.
それは画面をはみ出して, もっと先, 向こう側へと延びていく.
フレームが先にあってそこに画をはめ込んだのか, それとも拡がり続ける大きな絵が先でその一部を切り取ったのか…, それはたとえば, ずっと続く日常から一部を取り出して日記に認める作業と似ている気がする.
その隣には, 山中紅祐による作品が展示される.
ミニマルな作風が面白い.
モチーフになっているのは架空の都市名が記された時刻表や路線図, あるいは不思議なカレンダーなど.
紙に鉛筆やボールペンで書かれたキュートな作品の数々に思わずにんまりしてしまう.
奥の展示室では, 太田貴志による紙で作られたパトカーや救急車などの作品(車が好きなことがぐんと伝わってくる)や, 和合亮一の「雲をめぐる」と題された写真のスライドショーと詩の朗読, マルチチュードな状況への寛容さが清々しい(!)十中八九の作品
(立体・平面作品と, ライブ映像を取り混ぜたビデオ作品. シーラマン(半魚人)も, ブルボンじいちゃんのファンキーさも素敵), そして小松理虔×tttttanの作品(時間の経過とともに薄くなっていくFAX感熱紙の上に黒いペンで書かれたドローイング)が展示される.
どの作品を観るときも詩の朗読が絶えず耳に入ってきてしまいなかなか集中できないのが残念だったが(あるいは言葉が絶えず漂っている状況を狙っていたのだろうか)…, それぞれ気になる作品たちだった.
展示の最初に, 今回の企画展は「福島や東北で日常を表現する作業に焦点をあてた」ものであることが, 主催者のことばとして紹介される.
「日常」とよばれる日々の暮らしをじっくり見つめることは, 実はとても難しいと思う.
当たり前すぎて見落としてしまうことがたくさんあるし, あるいは記憶が邪魔をして真っ直ぐに見ることができなかったり, どこか気恥しさがあったり….
特別なことではなく, たとえば木々が風で揺れること, 一口飲んだ水がこんなにも美味しいということ, 大好きな人の笑顔に思わず笑顔で応える瞬間の愛しさ….
そんな日々の暮らしを素直にアートにできるのなら, そんなにも素晴らしいことはないと, そう思う.
(写真はお昼にお邪魔した, 喜多方「つきとおひさま」. 旬のおかず定食のお料理はどれも美味しい(特に, 車麩の入った肉ジャガと人参とオレンジのマリネが絶品)! やますけ農園のどんぶらたまご(たまごかけご飯用)とともに, ぺろっといただきました~. お店ではヤンマのお洋服の受注会も開催中で, 会津木綿の手触りがなんとも心地よかったです)