東北の作曲家によるオーケストラ新作展
大井剛史 指揮 / 仙台フィルハーモニー管弦楽団
2015.02.15. 3 pm
start / 日立システムズホール仙台 コンサートホール
作曲者らによるプレトークとナビゲーターの山野雄大さんの解説に続いて, 演奏会は大場陽子作品からスタート.
大場陽子「ミツバチの棲む森」は「コロニー」と「ネオニコチノイド」の2楽章からなる.
第一楽章では, 女王蜂の役割を果たす弦楽四重奏が独立して前に配置された.
曲はtuttiのクラスターによるざわめきからスタート.
旋回しながら近づき, 遠のいていくのはミツバチの群れか, もしくは外部からの脅威か.
喧噪が去って, 第二楽章はArpとFlの穏やかなデュエットから.
提示されたメロディはCl, Fl, Bn, Vib…とリレーされていく.
優しく透き通った光景が拡がる.
なんとも美しい光景だが, これは作曲者によるレクイエムなのだ.
ゆっくり, 何度も繰り返される旋律は, 逆境にも負けず続けられる生命の力強さを感じさせるのだった.
続く2作品目は木村正巳「交響曲」.
第一楽章「ad aquilonem(北へ)」は, ロマンティックな旋律や憂いを帯びた響きが次々と湧き上がる壮大な音楽.
ステレオタイプながらも, 交響曲の名に相応しい厚さだと思う.
まるでラフマニノフを思わせるような, 厚い(熱い)ロマンチックな強さで第一楽章は終止した.
続く第二楽章「vox(声)」は哀歌のような美しい響きにメゾ・ソプラノ(solo:井坂惠)が乗る作品.
音楽はみるみる昂揚し, テンションを増す.
ソリストの声が次々とかき消されたのは計算されたものだったのだろうか.
圧倒的なオケに, 声はところどころしか聴こえないのだった.
2つの楽章を合わせて30分を超える作品.
作曲者がいうように北方ロマン派を彷彿とさせる懐かしさ, 郷愁が不思議な印象を残す切ないラヴソングだった.
終盤, solo VnやVcが奏でたメロディと, 弦楽四重奏が奏でた響きがとても美しかった.
休憩を挟んで3作品目は, 八島秀「交響詩 森のコラール」.
打楽器無しのオケ編成による作品.
曲は2nd Vn(div)のアンサンブルからスタートした.
不安げな響きは次第に柔らかい響きになっていき, 後半, HnとTubaから始まるコラールのフーガがオケ全体へと拡張されていくさまが美しかった.
タイトルにふさわしい大自然の重厚なコラールが奏でられたあと, 曲は静かな終わりへと収束していった.
最後の4作品目は小山和彦「オーケストラのための協奏曲」.
Vnによって冒頭奏でられるロマン派的な切ないメロディとXyloが先導する攻撃的な速いパッセージが, 表となり裏となりながら次々に提示される.
中盤, 炸裂するB.D. の打撃音は, オケとの関係を切望する切ない響きに聴こえる.
後半(solo Vnのヴィルトゥオーゾ的なカデンツァのあと)オケはテンションを増しエンディングに向けて疾走して行き, 曲は打ち切られた.
終演は17時5分.
実験的な試みであったのだろうが, 会場はたくさんの観客であふれていた.
自分が設計した音風景が立ち上げるさまを客席から見ているのはどんな気分なのだろうか.
それはものすごいcooolな体験なのだろう.
そんなことをつい思ってしまった, なんとも立体的な演奏会だった.