阿部和重・伊坂幸太郎 (2014). キャプテンサンダーボルト. 文藝春秋.
key words:「地平線の猫」, 劇場版『鳴神戦隊サンダーボルト』, 村上病, ゴシキヌマ水, ポンセ, ピッチングマシーン, 9時11分, パチンコ屋のチラシ
少年に戻ったかのように, 一気に読んだ一冊.
どうやるとふたりでこんな物語を書けるのだろうか.
どんな共同作業でひとつの作品に仕上げたのか…, 純粋に驚嘆してしまった.
物語の舞台は蔵王.
阿部の出身地である山形と, 伊坂の本拠地である仙台・宮城の間に位置する場所だ.
主人公は社会人になってもフラフラしている相葉時之と, コピー機のリース会社で働いている井ノ原悠のふたり
(小学校のときの幼馴染).
まずは, この正反対の性格をもつキャラクターの描き方が, いい.
彼らふたりが, 阿部と伊坂の爽快・清涼な筆さばきで立体的に描かれ, ドキドキ・ハラハラのストーリーを駆け抜けるのだった.
すべてが終わって最後, 小説は野球場のトイレで再会する相葉と井ノ原, そして「鳴神戦隊サンダーボルト」の主人公を演じた赤木駿の姿を描く (:521).
そこで「どんなことにも、意外に逆転はある」(:同)に対し, 相葉と井ノ原はそれぞれ「思ったよりは逆転はある」, 「諦めなければ」と応えるのだった (:522).
なんとも微笑ましく, 印象に残るラストシーンだった.
人生は思うようにうまくはいかない.
でも, ふとうまくいことも, ある.
それが真実なのだろう.
そのことを痛快なエンターテイメントに仕上げた一冊だと思う.