映画「ザ・トライブ」
監督 Miroslav Slaboshpitsky / 2014年, ウクライナ
フォーラム福島で「ザ・トライブ」を観る.
画面の中に入り込まされる観客の視線, 臨場感たっぷりの長回しの映像
(主人公の後ろをずっとつけて歩いていくシーンなど, その場にいるかのよう), 何のBGMもない中で響くドアの音や足音の不気味さ.
そんなことで, ストーリーがイマイチ分からない(登場人物らが用いるのは手話, 字幕無し)ことは気にならなくなっていく仕組み.
それは新鮮だったが, 映画を常に支配するのは暴力とニヒで, それだけははっきりと分かるぶん, 悲惨なまでの残忍さが生々しくこちら側へ伝えられる.
日本での公開に当たってこの映画に付けられたキャッチコピーのひとつに「純愛」というものがある.
だが, 主人公が彼女を愛するに至った過程はほとんど語られず, 純愛(のキャッチコピーを真に受けてしまったのが悪かったが)は到底感じられない.
彼女への想いのために, 次々と人を殺し犯罪に手を染めていく主人公の心理も到底理解できない.
こうもすぐに彼の人生が変わってしまった, 変えられてしまった絶望感.
救いのなさ.
その想いだけが強く残る.
そこで思うのだ.
これがデビュー作だという監督が伝えたかったことはいったい何だったのだろうか…, と.
奇を衒うだけのような気もしてしまうのだったが, 茫然自失させられるこの気持ちが狙いなのであれば, それはそれで素晴らしく作戦成功なのだろう.
カンヌで批評家週間グランプリなどに輝いたという評価は, そこに送られたものなのだろうか.
それにしても, 観終わった後のこの絶望感と憔悴….
しばらくは何も話すことが出来なかった映画だった.
(福島市・「珈琲舎
雅」でいただいてきた「空」ブレンド. 深い香りがこころを落ち着かせます)