仙台フィルハーモニー管弦楽団第272回定期演奏会
2013.03.15 / 仙台市青年文化センター・コンサートホール
1曲目, ルーセルのバレエ組曲「くもの饗宴」は, そっと開けた窓からやさしい風が入ってくるように始まる.
朧げに紡がれていく柔らかい, ニュートラルなハーモニーが心地よい. 中盤, スネアの合図で行進曲に変わると, オケはそれまでとは一転, ロシア風の音楽を勇ましく奏でる.
その後音楽は怪しくうねり出し, 不思議なハーモニーが繋がる.
短いがドラマチックな作品である.
終盤に現れるワルツがとても幸せだった.
ソリスティックに扱われる管楽器がどれも秀逸, やさしい音色の弦とぴったりであった.
2曲目はプロコフィエフの組曲「キージェ中尉」.
実在しない人物(=キージェ中尉)の一生をめぐる, 不思議な音楽. 第1曲:キージェの誕生は, 袖で奏でられるコルネットからスタート.
ピッコロがそれを受け継ぎ, コミカルに歌いだす.
第2曲:ロマンスはコントラバスが朗々とうたうバラード.
客演主席コントラバスを務めた助川龍の演奏が見事だった.
チェレスタとテナーサックスが引き継いだメロディーは色彩を増して, さらに拡がる.
その厚みが心地よかった.
第3曲:キージェの結婚はシンバルと管合奏で明るく幕が開ける.
コルネットの素朴なメロディーに続いて, テナーサックスはまたもの悲しいバラードを奏でる.
虚構の結婚式に相応しい, わざとらしく明るい, 滑稽な音楽.
コルネットのソロがbravoだった.
第4曲:トロイカはかわいらしい, おもちゃ箱のような楽章.
第5曲:キージェの葬送では, これまで出てきたメロディーが再び登場する.
ロマンス(第2曲)のメロディーが特に美しい.
リハーモナイズされて溶けるように美しいそのメロディーは, 不気味に明るい「キージェの結婚」(第3曲)の主題に塗りつぶされていき, 音楽は複雑に絡み合っていく.
ラストは再びステージ袖のコルネット主題に戻り, 消えるように終わった.
様々な場面が想起される, わくわくするような演奏であった.
休憩を挟んで第3曲目は, ラヴェル「ダフニスとクロエ」組曲 (第1番・第2番/合唱なし).
最初の「夜想曲」から惹き込まれる. ピアノ(弱奏)で奏でられながらも立体感たっぷりの音楽だった (ウインドマシーンは(そしてチューバのミュートも…)視覚的にやっぱり楽しい…).
「インテルメッツォ」を経て, 「戦いの踊り」は勇ましく壮大.
カチっと第1番は終わった.
第2番の「夜明け」は内省的な弦のメロディーが美しい.
次第に上空へと上っていく音楽は夜明けそのもの.
「パントマイム」はなんともお洒落.
弦の海の上で踊るFlがbravo.
終曲「全員の踊り」は速すぎないテンポでたくさんの仕掛けを聴かせる仕方.
このくらいのテンポの方が怪しさが存分に出て雰囲気が出る.
ラストの一撃が余韻たっぷりに終わり, 会場中がその響きで満たされ, 演奏会は終了した.
アツいゲストコンマス(ツビグニェヴ・コルノヴィッツ)がイニシアティヴを存分にとっていた.
客電が点いてもなお繰り返されたカーテンコールからも, フロアの盛り上がりが伺えた演奏会であった.