馬渕仁編著 (2011). 「多文化共生」は可能か:教育における挑戦. 勁草書房.
key words:多文化共生, 多文化教育
※前回に続き…
第Ⅱ部 可能性への模索
第4章 多文化共生をどのように実現可能なものとするか:制度化のアプローチを考える(金侖貞)
金は, 多文化共生を実現可能にするためには, それを「実践的概念」として捉え直すことと, 「制度化」していくことが必要(:65)だという.
そのうえで, 歴史的に研究実績のあるオールドカマーに対する研究を参照し, ニューカマーとオールドカマーの連続性を「共生」を切り口に考え, 多文化教育を「断続的」でない「連続的」なものとして捉え(:69)ようとする. なぜなら, 多文化共生を制度化, 政策化していくことが必要なのは, 現にオールドカマーの問題がそのままニューカマーに再生産されている現状があるから(:74)だという.
そして, 金は「多文化共生を具現化していくために, 問題の再生産構造を是正し, 多文化共生の「他者」としての日本人の存在を位置づけるために, 多文化共生を制度化していくことが求められる」(:同)とし, ①オールドカマーとニューカマーにかかわる研究や実践の連携を図ること (:78), ②多文化政策という総合的なフレイムワークの構築における研究者のコミットメントのあり方を考えること (:79), ③外国人のアイデンティティ及び集団形成における「文化」の位置づけを見直すこと(:80)などの提言を行う.
「多文化共生」は可能か―教育における挑戦