6/03/2012

パパ・タラフマラ ロング グッドバイ


パパ・タラフマラ (2012). ロング グッドバイ:パパ・タラフマラとその時代. 青幻舎.

key words:身体, 表現

一度観てみたかった, と思う劇団やカンパニー, パフォーマンスがいくつかある.
天井桟敷, レニ・バッソ, (かつての)ダムタイプのpHS/N.
そして, 先月その活動に終止符を打ったパパタラも, このリストに入ってしまった.

本書には, パパ・タラフマラの解散に寄せて書かれたエッセイやインタビューが集められている.

解散に寄せた文章で, 佐伯剛(「風の旅人」編集長)はこう語る.
「個性とか自分らしさ等と安易に口にするステレオタイプが表現界や批評界に跋扈するなか、三十年間、ステレオタイプの停滞に陥らなかったパパ・タラフマラ。オリジナリティというのは、とてつもなく考え、神経を行き届かせ、身体を使い、心血を注いだ結果の出来事であると身をもって示し続けた。」(:16)と.

また, 天童荒太は「不安や困惑のなかにこそ、人生も芸術もおもしろさがある。なのに、わからないことに苛立つ人が、これは昔から大勢いて、芸術や芸能は、そうした人々や社会とのせめぎあいを繰り返してきた」(:27)とし, 「いまや、なんでもアリは面倒で、考えねばならないことは億劫、受け身のまま楽しませてくれないものはつまらない」と思われる時代になってしまった(:29)とする.
それゆえ, パパ・タマフラマが発展的解散に至ったのは必然だった, .

考えに考え抜いた表現を生み出し続けたアーティストと, 考えるのが面倒くさくなりつつあるオーディエンスたち.
哀しい関係である.

また, 本書にはパパ・タラフマラの代表・小池博史自身による, カンパニーの誕生から解散までの30年を振り返った文章も収録されている (150-158).
解散ではあるが悲しい感じだけにはならず, さて次はどうする?となるのがとても面白い.
アーティストはもう次を見据えているのだ.

感性の領域と頭の領域をきちんと繋ぐためにも, 語るということを一生懸命やろうと思っている, という小池 (webDICE).
「小池博史ブリッジプロジェクト」の今後が気になる.

ロング グッドバイ―パパ・タラフマラとその時代