角田光代 (2005). この本が、世界に存在することに. メディアファクトリー.
key words:旅する本, 本との旅, わたしを映す本
私がこの世でいちばん好きな場所は図書館だと思う.
…何の脈絡もないが, 吉本ばなな風にいえばそうなる.
図書館の安心感といったらまず他にはないし, 午前中でも午後でも夜でも, それぞれに雰囲気があるのがとてもいい. あの宝島になら何日でも居られる気がしている.
本屋も, ドキドキわくわくして大好きだ (…けれど, 増えに増えた本の行く末を案じはじめた最近はなるべく買わないようにしているので, やっぱり図書館が一番だと思う) .
本書には「本」をめぐる9つの短編が記されている (素敵なあとがきエッセイも加えれば10のお話になる).
ポカラ, アイルランドと, 私を旅先で待っている, 奥付にイニシャルと花の絵が描かれた旅する本 (「旅する本」).
「だれかを好きになって、好きになって別れるって、こういうことなんだ」と気づかせる漫画本の十五巻目や (:87), 「いろんな人の記憶」が書き綴られているのかもしれない伝説の古本 (:135).
たくさんの本が登場し, それらの本はそれぞれのやり方で, 私に私自身の姿を見せる.
そして, 「この本が存在するのとしないのとでは世界はだいぶ違うだろう」(:209) と, 思わせるのだ. やはり, 本は素敵だ.
あとがきエッセイで著者はいう.
「本は人を呼ぶ」と (:236).
さて, これから先, どんな本に呼ばれ, その本はどんな私を映し出してくれるのだろうか.
本との旅は続く. この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)