9/17/2017

高橋哲也 靖国問題


高橋哲哉 (2005). 靖国問題. 筑摩書房.

key words:感情, 歴史認識, 宗教, 文化

第一章「感情の問題:追悼と顕彰のあいだ」では, 靖国問題の根底にあるのが「戦死した家族が靖国神社に合祀されるのを喜び肯定する遺族感情と、それを悲しみ拒否する遺族感情とのあいだの深刻な断絶であり、またそれぞれの側に共感する人々のあいだに存在する感情的断絶であるとも言え」(:18)るものであり, ゆえにこの問題が哲学の対象となりうることが述べられる.
肉親を失った感情がなぜ「喜び肯定する」感情になるのか.
そこには, 我が子を戦場で失って悲しいはずの母親に「お国のために死ぬこと」や「お天子様のために」息子を捧げることを聖なる行為と信じさせる(:29)ことによって, 遺族感情を「悲しみから喜びへ」「一八〇度逆のものに」変える仕組み(:43)があることを高橋は指摘する (筆者はこれを感情の錬金術(:44)とよぶ).
そして, 靖国神社は「決して戦没者の「追悼」施設ではなく、「顕彰」施設であると言わなければならない」(:58)というのだった.

第二章「歴史認識の問題:戦争責任論の向こうへ」では, 中国や韓国政府が問題にしているのは靖国神社そのものではなく, 「戦犯が合祀されていることが明らかになっている靖国神社に、日本の首相が公然と参拝するという現在の政治行為に向けられている」(:71)ことが確認される.
それと同時に, 「戦争責任論」の視点からこの問題を論じる場合, すべてを聖戦として扱う靖国の考え方により, 満州事変以前の無数の戦争が見落とされる危険性も指摘される (80).

第三章「宗教の問題:神社非宗教の陥穽」では, 分祀に応じられない靖国神社のスタンスがまとめられる.
つまりそれは,「要するに、靖国神社の論理によれば、合祀はもっぱら「天皇の意志」により行われたものであるから、いったん合祀されたものは、「A級戦犯」であろうと、旧植民地出身者であろうと、誰であろうと、遺族が望んでも決して取り下げることはできない」(:99-100)ということである.
そして, 靖国神社を「非宗教化」することは不可能であることが指摘される.

第四章「文化の問題:死者と生者のポリティクス」では, 生者と死者との関係を日本文化の問題として扱った江藤淳の「生者の視線と死者の視線」をテキストに検討される.
そのうえで,「戦争の死者から敵側の戦死者を排除し、さらに自国の戦死者から一般民間人の戦死者を排除した後の、日本の軍人軍属(および日本軍の協力者)の戦死者との関係」が, 「江藤の言うような「文化」によってではなく、まさに国家の政治的意思によってつくられたものであるかぎり、靖国問題への文化論的アプローチは原理的限界をもっていると言わざるをえない」(:176)ことが指摘される.

第五章「国立追悼施設の問題:問われるべきは何か」では, 歴史認識を曖昧にしたまま「無宗教の国立戦没者追悼施設」を新たに建設する(:180)ことの危険性が指摘される.
そして, たとえば「国際平和のための活動」の名のもとに戦争が日本国家によって正当化されていくのであれば (194-195), 新たな追悼施設も「第二の靖国」と化すおそれが強い(:206)ことが加えて指摘される.
さらに, 「非戦の意志と戦争責任を明治した国立追悼施設が、真に戦争との回路を断つことができるためには、日本の場合、国家が戦争責任をきちんと果たし、憲法九条を現実化して、実質的に軍事力を廃棄する必要がある」(:220)ことが再三述べられるのだった.

最後の方は, まさにいま問題となっている事柄である.
10年以上前に書かれた問題が, 現実感を帯びつつある.
改めて戦争と平和について考えるために, いまこそ読み直したい本なのかもしれな
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(シャインマスカットより断然ピオーネ派)
(上の写真は移転オープンした上山市・あべくん珈琲!)

8/27/2017

髙橋コレクション・マインドフルネス2017


髙橋コレクション・マインドフルネス2017:日本の現代アートがここにある!
2017.07.22 - 08.27 / 山形美術館

企画展最終日, 山美へ.

展示は草間彌生の可愛らしいスカルプチャー(「ハーイ、コンニチワ! ヤヨイちゃん」と「ハーイ、コンニチワ! ポチ」)からスタート.
1展示室には草間彌生や奈良美智らの作品が並ぶ.
草間彌生の作品は歳を重ねてからの方がインパクトがあって, そのバイタリティーに改めて驚かされた.

2展示室では宙に浮かぶ村上隆の「Mr. DOB」がまず目に入る.
会田誠や山口晃らの大きな作品が並ぶなか, 展示室奥の壁一面に飾られた殊さら巨大な鴻池朋子の「Knifier Life」(剣の洪水から子どもを守る(?)6本脚のオオカミらを描いたモノクロ作品)が印象的だった.
はじめて観た町田久美のシニカルな絵もcuteだった.

3展示室(2階)には立体から映像, 写真, パッと見はなんだかわからないものまで, 多種多様な作品が並ぶ.
まさにアートの遊園地.
チームラボの若冲をもとにした映像作品「世界は統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」や, 畠山直哉の雨粒を纏った窓越しの風景を切り取った写真群も印象的だった.

山形でこれだけの(いわゆる)現代アート作品を目にするのははじめてのことではないだろうか.
そのコレクション群の豊富さに圧倒されると同時に, やはりアートは楽しいなぁと思える企画展だった.


8/14/2017

小林剛志 音楽構築の視点から捉えた他者との相互行為分析研究の展望と課題


小林剛志 (2009). 音楽構築の視点から捉えた他者との相互行為分析研究の展望と課題. 東京大学教育学研究科紀要, 49327-332.

key words:他者との対峙, 対話

たとえば作曲された作品の演奏や, あるいは複数の演奏者による合奏など, 様々な水準において音楽は「他者」との対峙を余儀なくされる芸術である (327).
本研究の目的は, そのような音楽を「所与の対象とせず構築過程として捉えることで, 他者と共に音楽を創り上げるとはどのようなことかを考察している研究の動向をレヴューする」(:328)ことである, という.

ここで扱われるのは, Schön2001/1983, 1987)によるチェロ奏者・カザルスのレッスンを分析した研究, 阪井(1997)のヴァイオリンレッスンの場面における「イメージ形成」の在り方について分析した研究, そして大地・岡田(2001)のピアノレッスン場面における比喩的な言語使用を「わざ言語」として捉え分析した研究の3つの実証的研究である.
レヴューに先立ち, 小林は「音楽構築過程を捉えるとは, 当事者が実践において何とどのように対話しているのかを読み解くことであり, ミュージシャンシップの学習過程を把握することである」(:328)とする.

3つの研究を精査し, 小林は(音楽が他の実践とは異なり, すぐに消えてしまう素材であることから)「共時的に個人内の思考過程や個人内の認知パターンの変化を追って捉えることができ」ず, それらを捉えることは容易なことではない(:331)とする.
そこで, 「グループなど人数を拡大して協同的な活動実戦の場面を分析対象にすることの可能性を提案」(:同)し, 論を閉じるのだった.
しかし, それらの研究であれば学校における音楽づくりをたとえばグラウンデッド・セオリーなどの手法で分析した質的な研究など, 先行研究の蓄積が古くからあるのではないか.
「わざ言語」に替わる文化的道具やその機能をどう捉えていくか, そもそも構築過程を共時的に捉えることへのこだわりがどれほど有意義なものなのか…, 気になるところである.

(上の写真はお昼にお邪魔した酒田市・花鳥風月の花鳥風月ラーメン (今日の酒田のラーメン屋さんはどこもすごい行列!). 一匹まるごと入っているプリプリとろとろの海老ワンタンと, 芳ばしい炙りチャーシューが美味しかったです(肉ワンタンも美味しい)! 下の写真は南陽市・六味庵のちびかりと, 大好物・庄内の青さ!)


7/30/2017

全日本吹奏楽コンクール第56回山形県大会《一般の部》


全日本吹奏楽コンクール第56回山形県大会《一般の部》
2017.07.30 / やまぎんホール

夕方, 一般の部を聴きにやまぎんホールへ.

寒河江吹奏楽団の自由曲「散歩、日傘をさす女性:クロード・モネに寄せて」(八木澤教司 作曲)のスケール感がある演奏(力任せの感は多々あったが…)や, 鶴岡吹奏楽団の自由曲「レント・ラメントーソ」(真島俊夫 作曲)の吹きこんだ感じもよかった(pitchがもっとよくて, 音楽の連なりももっと見えればよかったか…)が, 今年は酒田吹奏楽団が秀逸.
課題曲の2番は(あんなに暗いマーチなのに!)メリハリをつけて, しっとりたっぷりマイルドな音楽を聴かせた.
自由曲の「ウインドオーケストラのためのバラッド」(高昌 作曲)は余裕のあるフォルテで, 包まれて心地よい響きだった. 音楽が拡がって行く感じもとてもよかった.

(上の写真はこの後お邪魔した山形市・山之助の からし味噌つけ麺 (みじん切りされた玉ネギがいい感じです). 下の写真は先日お邪魔した米沢市・心那やの板そば. ラーメンもお蕎麦も大好物です)

7/26/2017

LUCKY TAPES Cigarette & Alcohol


LUCKY TAPES Cigarette & Alcohol
2016.07.06 / RYECD-260

LUCKY TAPESのアルバム2作目.

キレのいいリズムとトランペットがcool3曲目「レイディ・ブルース」(先行EP(「MOON2016.01.13 / RYECD-235)に収録. ちなみにこのEP2枚組で, もう一枚は渋谷の初ワンマンライヴの映像が収められているDVD), 一小節置きで4拍目にやってくる三連符が中毒性をもっている5曲目「パレード」, 女声とのduoがオシャレな7曲目「夜想曲」, シングルカットされている8曲目「MOON, 10曲目「TONIGHT!」などがいい.
ただ, 9曲目「スローモーション」はpops過ぎて正直 首を傾げてしまった(これじゃまるでセカオワだ)….

10曲入り.
今のところデビューアルバム「The SHOW」が一番のお気に入り.

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22日に放映されていた「男子旅」(Dlife), 沖縄でした!
う~, 行きたい….
(下の写真は米沢市・可奈免. 今日は一年に一度, うなぎの日)


7/22/2017

LUCKY TAPES The SHOW


LUCKY TAPES The SHOW
2015.08.05 / RYECD-250

ペトロールズのトリビュートアルバムに参加しているのを聴いて以来, 気になっていたLUCKY TAPES.
本作が彼らのデビューアルバムになるのだという.

デビューアルバムにして, すっばらしい.
お洒落な音楽(ブラスセクションや鍵盤の使い方がとってもオシャレ)に少し危ういボーカルがのる.
特に3曲目「Touch! (album version), 5曲目「Peace and Magic (album version), 6曲目「Friday Night, 7曲目「夜が明けたら」, 8曲目「Gun」がいい.
(「Peace and Magic」は同名のEPとして先にリリースされている (Peace and Magic2015.07.22 / RYECD-208). そこにはこのアルバムとは別remixのトラックが2つ収められている. こちらもcool
とても心地よいのだ.

LUCKY TAPESvo & key・高橋海 (楽曲制作も担当), ba・田口恵人, gu・高橋健介の3 (デビュー時にはもうひとりdrのメンバーがいて4).
入手できるだけのCD4枚手に入れて, 何度も聴いている ().

(写真は, 蔵王温泉の温泉街外れにあるLog cafe Snow Domeでいただいたナポリタン. 黒いミニチュアシュナウザー(クレマくん)がお店のなかにいて, カワイイのです)