小林剛志 (2009). 音楽構築の視点から捉えた他者との相互行為分析研究の展望と課題. 東京大学教育学研究科紀要, 49:327-332.
key words:他者との対峙, 対話
たとえば作曲された作品の演奏や, あるいは複数の演奏者による合奏など, 様々な水準において音楽は「他者」との対峙を余儀なくされる芸術である (:327).
本研究の目的は, そのような音楽を「所与の対象とせず構築過程として捉えることで, 他者と共に音楽を創り上げるとはどのようなことかを考察している研究の動向をレヴューする」(:328)ことである, という.
ここで扱われるのは, Schön(2001/1983, 1987)によるチェロ奏者・カザルスのレッスンを分析した研究, 阪井(1997)のヴァイオリンレッスンの場面における「イメージ形成」の在り方について分析した研究, そして大地・岡田(2001)のピアノレッスン場面における比喩的な言語使用を「わざ言語」として捉え分析した研究の3つの実証的研究である.
レヴューに先立ち, 小林は「音楽構築過程を捉えるとは, 当事者が実践において何とどのように対話しているのかを読み解くことであり, ミュージシャンシップの学習過程を把握することである」(:328)とする.
3つの研究を精査し, 小林は(音楽が他の実践とは異なり, すぐに消えてしまう素材であることから)「共時的に個人内の思考過程や個人内の認知パターンの変化を追って捉えることができ」ず, それらを捉えることは容易なことではない(:331)とする.
そこで, 「グループなど人数を拡大して協同的な活動実戦の場面を分析対象にすることの可能性を提案」(:同)し, 論を閉じるのだった.
しかし, それらの研究であれば学校における音楽づくりをたとえばグラウンデッド・セオリーなどの手法で分析した質的な研究など, 先行研究の蓄積が古くからあるのではないか.
「わざ言語」に替わる文化的道具やその機能をどう捉えていくか, そもそも構築過程を共時的に捉えることへのこだわりがどれほど有意義なものなのか…, 気になるところである.
(上の写真はお昼にお邪魔した酒田市・花鳥風月の花鳥風月ラーメン (今日の酒田のラーメン屋さんはどこもすごい行列!). 一匹まるごと入っているプリプリとろとろの海老ワンタンと, 芳ばしい炙りチャーシューが美味しかったです(肉ワンタンも美味しい)! 下の写真は南陽市・六味庵のちびかりと, 大好物・庄内の青さ!)