4/29/2017

PETROLZ WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ ?


PETROLZ WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ ?
2017.03.22 / VIZL-1139

ペトロールズは長岡亮介, 三浦淳悟, 河村俊秀のスリーピース・バンド.
ほぼ長岡(浮雲)よって書かれる楽曲がとてもcool.
今作は2007年にリリースされた彼らのファーストCD「仮面」のリリース10周年を記念して制作されたオフィシャル・カバーアルバム(トリビュート)で, 11組のアーティストが参加している.

1曲目「シェイプ」(LEO今井+呂布)はマイケル・ジャクソンを想わせる80年代アメリカンポップスのようなサウンドに大胆なボーカルがのる.
2曲目「Profile」(LUCKY TAPES)は少年の声のようなボーカルが印象的だ.
3曲目「新頂感」(林宥嘉(YOGA LIN))はエッヂの効いたギターにやさしいスキャットがそっと のる (中国語!).
ラップ(4曲目「アンバー」(KID FRESINOSTUTS))を挟んで, 5曲目「表現」(R' N' RReiNAOKIROY))は女性ボーカルのロックンロール.
インストの6曲目「Touch Me」(Seiho)に続き7曲目「On Your Side」(Yogee New Waves)は どこかレトロでノスタルジックな響き.
8曲目「雨」(Suchmos)はメッセージあるうたと音楽が印象的.
9分弱たっぷりと漂うjazzyなインスト(「ホロウェイ」(SOIL & "PIMP" SESSIONS))を挟んで, 10曲目「Fuel」(ORIGINAL LOVE)はどこか懐かのロック系.
そして最後11曲目「Side by Side」(never young beach)は昭和の雰囲気満点のノスタルジーを味わえる楽曲.

LUCKY TAPES2曲目「Profile」とSuchmos8曲目「雨」がとてもsexy.
全く異なる雰囲気を味わうことができる楽曲の数々.
レトロな写真集ブックレット付き.


4/16/2017

山形交響楽団 第260回定期


山形交響楽団 第260回定期演奏会
2017.04.16, 3 pm start / 山形テルサホール

桜が一気に花開いた山形市内.
今日の気温は20度を超えるあたたかさ!
そんな中, 2017年シーズンのオープニングを飾る山響定期へ行ってきた.

最初に演奏されたのは西村朗「弦楽のための悲のメディテーション」.
2012年の委嘱作品の再演.
緊張感のあるやりとりを経てラスト, 強烈なpizz.を経て静かに消えていくVlaの音が印象的だった.

2曲目はドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104.
ソリストはカメラータ・チューリッヒのソロ主席, 新倉瞳.
飯森さんのトーク(ドヴォコンがなぜこんなに有名になったのか)のあと, 演奏ははじまった.
第一楽章から哀愁たっぷりのソロが絶品.
Flとのduoも素敵だった.
終盤, ファンファーレを導くソリストは, さながら民衆を導く自由の女神のようだった.
第二楽章はやわらかい木管アンサンブルを受け継ぎ, しっとり・まろやかにうたうソロがこれまた絶品.
スラヴ風のメロディが切なくうたわれる.
カデンツァも美しく, うっとりするような演奏だった.
第三楽章はこちらもソロがbrava
難曲を力強く弾ききった.
今日の演奏では管楽器群の輝きもキラキラと素晴らしかった.

度重なるカーテンコールを受け, ソリストが弾いてくれたアンコールはSecundaの「Bei mir bist du Schon(イディッシュ語で「素敵なあなた」という意味のジャズのスタンダードナンバー. ちなみにセクンダは「ドナドナ」の作曲者だそう).
ピチカートで静かに始まった伴奏にのせ, 何語か分からない どこかジプシー風(?)のエキゾチックなうたを静かに歌いだした(!)ソリスト.
TubaTpが間奏で次々と飛び入りしたのも面白かった.

休憩を挟んで後半はモーツァルト「交響曲 41 ハ長調「ジュピター」K.551.
暗譜で振るマエストロ.
第一楽章は軽快・軽やかな演奏.
バロックティンパニの朴訥とした響きを久しぶりに聴く.
素朴な第二楽章を経て, 第三楽章は優しいメヌエットだが, メリハリのある小気味よい演奏だった.
第四楽章は安定感のある演奏で, 最後まで心地よく駆け抜けた.
それにしても, この緻密な設計図をひと月あまりで書いたというのだから, モーツァルトはやはりすごい.
そしてその緻密な設計図を軽やかに, そしてダイナミックかつ遊びごころたっぷりに演奏した山響も素晴らしい.

終演は1715.
今シーズンの山響も楽しみだ.


4/06/2017

阿部和重・伊坂幸太郎 キャプテンサンダーボルト


阿部和重・伊坂幸太郎 (2014). キャプテンサンダーボルト. 文藝春秋.

key words:「地平線の猫」, 劇場版『鳴神戦隊サンダーボルト』, 村上病, ゴシキヌマ水, ポンセ, ピッチングマシーン, 911, パチンコ屋のチラシ

少年に戻ったかのように, 一気に読んだ一冊.
どうやるとふたりでこんな物語を書けるのだろうか.
どんな共同作業でひとつの作品に仕上げたのか…, 純粋に驚嘆してしまった.

物語の舞台は蔵王.
阿部の出身地である山形と, 伊坂の本拠地である仙台・宮城の間に位置する場所だ.
主人公は社会人になってもフラフラしている相葉時之と, コピー機のリース会社で働いている井ノ原悠のふたり (小学校のときの幼馴染).
まずは, この正反対の性格をもつキャラクターの描き方が, いい.
彼らふたりが, 阿部と伊坂の爽快・清涼な筆さばきで立体的に描かれ, ドキドキ・ハラハラのストーリーを駆け抜けるのだった.

すべてが終わって最後, 小説は野球場のトイレで再会する相葉と井ノ原, そして「鳴神戦隊サンダーボルト」の主人公を演じた赤木駿の姿を描く (521).
そこで「どんなことにも、意外に逆転はある」(:同)に対し, 相葉と井ノ原はそれぞれ「思ったよりは逆転はある」, 「諦めなければ」と応えるのだった (522).
なんとも微笑ましく, 印象に残るラストシーンだった.

人生は思うようにうまくはいかない.
でも, ふとうまくいことも, ある.
それが真実なのだろう. 
そのことを痛快なエンターテイメントに仕上げた一冊だと思う.