萱森直子 瞽女唄
2014.06.27, 7 PM start / 土礼味庵(山形県川西町玉庭)
「瞽女とは, 他の手段ではなかなか生きていけなかった人々のことである. その意味でわたしは瞽女ではないし, 現在瞽女は絶えてしまったが, 瞽女唄は うたい継いでいきたいと思っている」
最初にそう語った萱森.
会場となったのは300年近く前に建てられた古民家.
かつては実際に瞽女宿だったというのだから驚く.
1曲目は門付け唄(長岡の瞽女唄「瞽女松阪」)から.
いつもこの唄から始めるのだという.
絞り出すような声が, 部屋の空気を一瞬にして変えた.
続いて2曲目は段物(だんもん):祭文松阪の「佐倉宗五郎」から, 2つの場面を抜粋して.
昔の人も同じくその話に惹きつけられ, 手に汗 握ったのだろうか.
三味線と唄だけだというのに, この臨場感はなんとも不思議.
休憩ののち, 「信州追分」を挟んで「佐倉宗五郎」の続き.
そして最後に立ち唄(お別れの唄)として「しげさ節」を唄ってくれた.
これは長岡ではなく高田の瞽女唄だという.
もの哀しい節に, 小粋な歌詞が載る.
かつてはこのような立ち唄を, その村を離れる際に家の軒先や村の境の大きな木の下などで唄ったのだという.
どの唄も, 哀愁と迫力, 相反する魅力が共存している不思議なもの.
ただ, この魅力はきっと同じ空間で生で聴かなければ感じられないものだとも思う.
身体の底から絞り出されるうた声がヒリヒリと震わせる空気が, 瞽女唄の一番の魅力だ.