8/31/2013

全日本吹奏楽コンクール第56回東北大会・高等学校の部


全日本吹奏楽コンクール第56回東北大会(高等学校の部)
2013.08.31 / 郡山市民文化センター大ホール

会場入り口から彼方向こうへと続く長蛇の列に並んで, ホール内へ.

「バンドのカラー」とよく言われるが, 本当にそういったものがあるんだなぁ, と前半から思わせられる.
それと同時に, ミスやズレといったものが, それがどれだけ少しであっても聴き手にとってはストレスになるんだと改めて思う.
ほんの少し発音やザッツがズレるだけで, とても雑な印象を受けてしまう.
ズレた音は推進力を失って, 当然こちら側へは飛んでこない.
序盤は残念ながら惜しい演奏が続いた.

そんな中, 印象に残ったのは以下の4つの演奏であった.

福島県立平商業高校の演奏は, 県大会時にも増して磨かれていた.
束となって飛んで来るまとまりのある音と, それが生み出すリズムのキレ, スピード感.
この日の課題曲Ⅲ(岩井直溥「復興への序曲『夢の明日に』」, ドラムセットを用いるポップス)の演奏ではズバ抜けて良かったと思う.
自由曲(矢代秋雄/篠崎卓美「交響曲」より)の冒頭部の滲ませ方も, なんともcoolで素敵だった.

福島県立磐城高校の演奏は, 課題曲Ⅴ(広瀬正憲「流沙」, 音色旋律を用いた楽曲)が見事.
音楽の余白をうまく使ったつくり方は, 閉会式の審査員講評(作曲家・福島弘和氏)でもあったとおり, 素晴らしかった.
引き際や収め方で聴く側を印象付ける演奏は大人っぽく, この日の課題曲Ⅴ演奏団体の中では, 楽曲を最も自分たちのものにしていたと思う (課題曲Ⅴは, 磐城高校の前に演奏した山形県立山形中央高校の演奏も, 様々な仕掛けを聴かせるお洒落なものでよかった).
ちなみに, 今日のコンクールでは24団体中12団体が演奏した課題曲Ⅴだが, 型にハマりすぎて前に進まない演奏だったり, 内声が影に隠れすぎていて立体感が出せていなかったり, 大げさすぎて全くさり気なさが無かったり…, そんな演奏が多くあった.
バンドメンバー全員の協力が必要な楽曲だけに, 仕上げの部分での差が出た気がする.

宮城県代表, 聖ウルスラ学院英智高等学校の演奏も印象的だった.
課題曲(Ⅴ番)は颯爽と, coolに決めるつくり方.
自由曲(三善晃/遠藤正樹「魁響の譜」)は, よく演奏するなぁ, と(思わず)感心してしまった.
そのテクニックのうえで もう少し色が出せればさらによかったのだろうか.

そして最後に演奏した秋田県立能代高等学校の演奏が, もっとも印象的だった.
課題曲Ⅲに続いて, 天野正道「エクスピエイション」を演奏したのだが, 演奏したのは36人のバンド.
この一体感が素晴らしかった.
課題曲では55人のバンドに負けないフォルテとキレで, グルーブ感をいっぱいに出した.
自由曲でも一人ひとりが音色へのこだわりの感じられる音(管楽器はもちろん打楽器も)で, しっかりと鳴らして演奏した.
ストーリーもしっかりとしていて, コーラスとともに光が差しこむ様にはドキっとさせられた.

24団体の演奏を聴いて, バンド全体のものとして どれだけ拘って音楽を届けようとしているのか.
それが大切なのだと改めて考えさせれられた一日だった.

8/18/2013

柚木麻子 ランチのアッコちゃん


柚木麻子 (2013). ランチのアッコちゃん. 双葉社.

key word:東京ポトフ

短い話が4本収められたオムニバス.
どの話にもとびきりキュートでカッコいい(と私には思えた)アッコちゃん(45歳)やその部下(?)が登場する.

一本目, 「ランチのアッコちゃん」.
派遣社員の澤田美智子は, 派遣先部署唯一の女性正社員黒川敦子部長(アッコちゃん)と一週間ランチを取り替えることになる.
美智子が作るのは無印良品のアルミのランチボックスに入った素朴なお弁当.
一方, 黒川から渡されるのは彼女が曜日ごとに決めているお店の地図とメニュー, そして現金だ.
黒川から日替わりで提示されるランチメニューはどれも本当に旨そうだ.
でも, 美智子が交換によって手に入れたのは, 食べものだけではない.
ランチを食べる時間と, 会社では見ることのできないアッコちゃんのたくさんの顔, そしてそのご飯を取り囲むたくさんの人との繋がりだった.
失恋の痛手ですっかり元気を無くしていた美智子が段々元気になっていくさまはとても爽快.
思わず笑顔になるおはなしだった.

第二話, 「夜食のアッコちゃん」.
前話で勤めていた会社が倒産し, 美智子は別の会社に勤めている.
新しい会社の人間関係で悩んでいたところに, 新しくポトフのワゴン販売を始めていたアッコちゃんと再開する.
商売を手伝わせてもらうようにお願いをした美智子は, 日中の会社勤めに加え夜のワゴン販売を手伝うことになる.
働きづめでハードな日々だったが, ここでも美智子はポトフが繋ぐ出会いを通して自分と深く向き合っていくのだった.

三つ目は「夜の大捜査先生」.
前の二本と違い, 満島野百合(30歳)とその高校時代の担任ゾノせん(前園英作)が主人公のはなし.
高校時代にやんちゃをしていた野百合はひょんなことからゾノせんと再会し, 自分と同じように夜の町を遊び回っている現役女子高生ハマザキを探すことになる.
高校時代が一番輝いていて, 今の自分には何もない, 結局何者にもなれなかったという野百合だったが (120), そんな教え子にゾノせんは, 今の方がよっぽど輝いているという.
朝に向かい明けていく渋谷の町を舞台にした, 疾走感溢れるストーリーだった.

最後のはなしは「ゆとりのビアガーデン」.
とあるベンチャー企業を3か月で辞めてしまうOL玲実が主人公. 
退社後玲実は会社が入っていた同じビルの屋上にビアガーデンをオープンさせる.
なによりも元気な彼女が爽快だが, その熱は当然周囲を巻き込んで変化を起こさせていくのであった.

12話のどことなく引っ込み思案の美智子, 3話の自分に自信が持てない野百合, そして4話のゆとり世代で使えないと揶揄させる玲実の3人に共通するのは,その行動力と好奇心の旺盛さだ.
熱を発するものはまたどんどんと熱を帯びて, その熱が周囲に派生していく.
その光景はそれだけで気持ちよいものだが, 本書ではその熱源に美味しそうな食べものが数多く登場するのだ.

あたたかい食べものは人と人とをつなぐ.
そんなことを改めて考えさせる一冊.

ランチのアッコちゃん

8/09/2013

"WHAT's PUNCH LINE !?" vol.2


"WHAT's PUNCH LINE !?" vol.2
2013.08.09 / SENDAI KOFFEE.CO

仙台市にあるカフェ, SENDAI KOFFEEで蜜と齋藤ジョニーのライヴ.
会場は立ち見を含めて観客で溢れていた.

前半, 蜜の二人のライヴでは, そのパフォーマンスの高さに驚く.
フロアの気持ちをぐっと掴んで, 最後まで離さなかった.
二人のうたはもちろん, 橋詰遼のギターと木村ウニの鍵盤ハーモニカが心地よい.
ニューアルバム「HeSheShow」からの楽曲をメインに演奏してくれたが, 最後に演奏してくれたのは「アセロラ」.
アップライトピアノの弾き語りで(マイクも用いず)完全に生音.
優しい雰囲気の中 前半のステージは終わった.

後半は齋藤ジョニーのステージ.
ギター, バンジョー, フラット・マンドリン, ループサンプラーとたくさんの楽器と機械を駆使してのパフォーマンス.
こちらも相変わらずの楽しいライヴ.
フロアも巻き込んで大盛り上がりだった.

最後にアンコールで3人が歌ってくれたのは, はっぴいえんど「風をあつめて」.
夏の夜にほんわかしたライヴだった.

HeとSheでShow

8/04/2013

第51回福島県吹奏楽コンクール・高等学校第一部


51回福島県吹奏楽コンクール・高等学校第一部
2013.08.04 / 郡山市民文化センター大ホール

吹奏楽コンクール福島県大会・高等学校の部には, 22の団体が出演した.
最後の講評で審査員が「福島は必死で音楽をやろうとしている, 独特の熱気を感じる」と言ったとおり, どの団体も素晴らしい演奏を披露した.

だが, 午前中の演奏を聴いて思ったことは, サウンドの魅力の有無は最初で分かってしまう, という厳しい現実だ.
金管・木管のブレンドの無さ, 音がまとまらずに飛んでこないフォルテ, 飽和し遅れてしまうAグループ, 安定感が無く重いperc., , 最初で分かってしまうのだった.
フレーズについても, 不自然なフレーズや終わりの雑さ, 一本調子で演奏されるフレーズの寂しさといったものを, 改めて感じた (遅れるAグループと重い裏打ちで演奏されるマーチのストレス…, も改めて痛感…).

昼には地震があってドキッとしたが (ちなみに先月末の山形県大会では土砂災害警戒情報を知らせる緊急メールが多発!), 午後の最初のブロックで演奏した福島県立平商業高等学校は, 課題曲(Ⅲ, 岩井直溥「復興への序曲『夢の明日に』」)がとてもお洒落で惹き込まれた.
残響が美しく, そこに入って来るsaxsoloも雰囲気満点だった.
自由曲の交響曲(矢代秋雄/篠崎卓美)は, うたが美しく心地よい.
後半, 動き出したときのcoolさが見事だった (Tp3, Tb4人がbravi).

次のブロックで演奏した福島県立湯本高等学校は, 課題曲Ⅴ(広瀬正憲「流沙」)の冒頭, Tbが軽くす~っと入る仕方でカッコいい.
音がしっとりしていて, ラストも整理されていて心地よかった.
自由曲(R.シュトラウス/高木登古)では, 深みのある金管が秀逸.
サウンドのバランスやハーモニーも心地よくて, まるでステージが客席に近づいたかのような印象を受けた.

本日最後に演奏した福島県立磐城高等学校は, 学ランではない姿が印象的.
課題曲(Ⅴ)はマーチかと思うような大きな振り始めの指揮で, ガツんと始まった.
たっぷり鳴らされ飛んでくる音が, これまでの団体とはやはり違う別物.
多彩な音色と質感が印象的だった.
自由曲は, 福島弘和「『相馬流山』の主題による変奏曲」.
tubaまでどの楽器もしっかりと歌う厚みのあるサウンドに引き込まれる.
貫禄たっぷり, 聴かせる演奏だった.

最後の講評(東京佼成Hn奏者・並木博美氏)では, 演奏しながら自分の音, まわりの音, そして全体の成り行きをしっかりと聴くことが大切だ, との話があった.
それをちゃんと聴けている人は, たとえフォルテになっても決してガナらない, .
そのうえで, 作曲家の想いをしっかりと考えることが大切だ, とのことであった.
まさにその通りだと, 演奏を聴いて改めて思った一日だった.
(そして余談だが, 「金賞ゴールド」(ゴールド金賞, ではなく)と読み上げられる結果発表も印象的だった…)
 
コンクール後に行われた多田将太郎(東京ブライト・ブラス・クインテット/ Tp)の特別演奏会では, 三沢慶の「See You Tomorrow」が優しく歌われ.