戌井昭人 (2012). ひっ. 新潮社.
key words:ミミズ, 瞬間移動
主人公のおれとその伯父であるひっさん, そして二人に関わる何人かを中心に進んでいく物語.
登場する人物が, そのエピソードを含めてみな愉快で面白い (ひっさんはもちろん, 元レスラーで「額に噛みつき流血させる「馬の血だるま」という得意技を持っていた」(:25)ウマちゃんも, しめじチャーハンの名手 下野さんも, 「漂流物に混じっていたハングル文字の箱をジーっと眺めて「明日から三日間は雨です」と天気予報をしたり」(:30)する気球さんも).
自分が海外へ旅に出ている間に亡くなったひっさんの遺品整理をするため, 久しぶりにひっさんの家を訪れたおれは, ひっさんのことを思い出しながら奇妙なことに巻き込まれていく.
ノンフィクションぎりぎりの物語を読んでいると, まるで芝居かコントを観ているような気分になる. それほど, 物語には加速的な求心力があった.
テキトーに生きろ, とおれに言い ,「おれの言ってるのは、そういうテキトーじゃねえよ。生きるためのテキトーさだよ。お前のはテキトーが死んでいる」(:39)と言うひっさんは少しカッコいい.
そしてテキトーに生きるのは, なかなかどうして, やっぱり難しい. ひっ