Chim↑Pom (2012). 芸術実行犯. 朝日出版社.
key words:想像力, リアリティ, アーティストとは, アートとは
「自他ともに認める「アーティスト集団」」(:12)であるChim↑Pom(チン↑ポム)(卯城竜太・エリイ・林靖高・岡田将孝・水野俊記・稲岡求の6人, 2005年結成)の著作.
第1章「アートは自由な遊び場だ」では, 《スーパーラット》以降「社会的な方向性が強」まった(:30)というChim↑Pomが「お騒がせ集団と評され」(:12)ながらも「様々な方法で社会に分け入って」(:35)いった過程が語られる.
2008年の作品《ヒロシマの空をピカッとさせる》(:47-)にかかわる一連の活動や, 《LEVEL7 feat.『明日の神話』》をめぐる活動から見えてくる彼ら・彼女らのスタンスは, 「アーティストは「名乗る」よりも「やる」ことの方が大事であって」(:79), 「アートは何をしたのか?」「自分はどう生きたのか?」(:71)について答えるものだ, という姿勢だ.
その点において, Chim↑Pomの作品には彼ら・彼女らのいう「不変性」(:77)のような一本通った筋が存在する共通点がある.
第2章「アートで世界はひっくりかえる」では, Chim↑Pomと同じく, たとえば「単身その地域に乗り込んでいって、住民たちとリアルな対話」をしながら(:112)作品を作り上げるようなアーティストら(バンクシー, ヴォイナ, JR, ジェラティン, 「アドバスターズ」のカレ・ラースン, ゼウス, レディー・ガガ, レミ・ガイヤール, ダブル・フライ・アートセンター (中国にもこんなアーティスト集団がいるとは…), 「DOMMUNE」の宇川直宏など, その活動を読んでいるだけでドキドキ・にんまりしてしまうようなアーティストら)が紹介される.
これらのアーティストに共通するのは, 「アートを目的よりも方法としてとらえていること」(:144)だとChim↑Pomは指摘する.
そして, アートを「遊び場」にしアートを「使う」アーティストらが見せているのは, 単なる物質ではなく, 「絵なら絵を, コンセプトならコンセプトを通して」「「心」や「志」」(:148)なのだとするのだった.
最後の章である第3章「アートが新しい自由をつくる」では, 以上をふまえ「アーティストは「新しい自由」の発明者」(:165-)なのだとまとめられる.
そして, 自分たちの活動は「見ることができない、見ることをしなかったもの」を「想像」し, 社会の現実を捉え身体で体現することで「リアリティ」を求めてきたものである (:174-176), と まとめられるのだった.
Chim↑Pomの作品を観て引き起こされる反応は人それぞれ, さまざまであろう.
わたしは水戸芸で観た作品には強烈な不快感を覚えたが…, 憎らしくも彼ら・彼女らの作品は…, やはり気になるのだ (笑).
本書を読んで, その理由が少しわかったような気がした.