1/18/2013

仙フィル 第270回定期演奏会


仙台フィルハーモニー管弦楽団 270回定期演奏会
2013.01.18 / 仙台市青年文化センター・コンサートホール

「変容, 変奏をテーマに一度プログラムを組んでみたかった」

オープニング・トークでそう語ったのは, 今年度より仙フィルのミュージック・パートナーとなった山田和樹である.
ラフマの第18変奏の いったいどこが変奏なのか説明する指揮者は終始にこやかで, 会場は はじめからアットホームな雰囲気に包まれた.

1曲目はブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」.
主題を奏でる最初の木管アンサンブルがあまりにも幸せな音で, にんまりしてしまう.
弦楽器の潤った音も心地よい.
その音を導き出すのは, 大きなキャンバスに絵の具を置いていくかのような柔らかい指揮だ.
楽しんで振っているのが分かる棒で, こちらも楽しくなってしまう (演奏会終了後にそうお話ししたら, 「そうなんです, 上手くいってるときは楽しそうなんです」とのお返事. とても気さくな方でした).
ラスト, 回帰したテーマ(弦)もとても柔らかく厚みがあり (ホールの響きもとてもよい), 心地よかった.

2曲目はラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」.
ピアノのヴァディム・ホロデンコが秀逸.
鍵盤を撫でるように弾かれる優しいピアノ.
そこから立ち現れるのは, 手渡しでそっと伝えられるような音だ.
その柔らかい音はオケとも相性抜群だった.
中盤, 12変奏(4分の3拍子)の管楽器のソロとピアノのフレーズが, 揺蕩う感じでとても気持ち良かった.
18変奏のピアノは滲み出てくる優雅さが なんとも上品.
派手さはなくても, じわじわ伝わってくる愛情にしびれる音楽だった.
度重なるカーテンコールの末に弾いてくれたアンコールもそっと優しい音色が印象的だった.

休憩を挟んで最後に演奏されたのはヒンデミット「ウェバーの主題による交響的変容」.
1楽章は対位法を明瞭に聴かせつつも, チャーミングさや おもしろさ(パロディ感)を存分に出して, その対比が面白かった.
2楽章では, さながらjazzのようなtrioが小粋で軽快だった.
Tp, TbTimpのアンサンブルが素晴らしかった.
3楽章ではCl, Bsn, Hr, そしてラストのFlと続く管のsoloがとてもよかった.
4楽章はゴージャスなラストが心に残った.
キラキラした管楽器と, それを浮かび上がらせる厚い弦楽器が迫力満点だった.

仙台市民の熱烈歓迎を受けて終えたデビュー・コンサート.
最後に指揮者が語った「いま幸せでうれしい」といった言葉は, まるで自分のことのように共感できるものだった.
来月にはロシア公演も控えている仙フィル.
今後も楽しみである.