7/01/2012

植田正治「風の記憶」展


風の記憶:植田正治の私風景
2012.06.09 09.09 /島根県伯耆町・植田正治写真美術館

「時が翔ぶ。場所が翔ぶ。まなざしを翼にして。」

鷲田清一はかつて, 植田正治の写真にはじめて触れたときの印象をこう著した (植田正治・鷲田清一 (2000). まなざしの記憶:だれかの傍らで. TBSブリタニカ:12).
ホスピタリティ(=他者を迎え入れるということ)(鷲田清一 (1999). 「聴く」ことの力:臨床哲学試論. TBSブリタニカ:133)というものを考えるとき, 植田が撮った情景がいつも思い浮かんでくるという鷲田.

今回植田の写真を目の当たりにして, その奇妙な安心感に以前読んだ鷲田の文章を思い出した.
一見すれば不思議な写真なのに, 時間も空間も越えて手を差し伸べられているような…, そんな安心感があった.

今回の展示では, いつものモノクロ写真(シリーズ〈風景の光景〉1970-80, など)だけではなく, 植田のカラー写真もいくつか展示された (シリーズ〈とおい風の譜〉1983).
カラーになると日常感が一気に溢れ出してくる.
少し川内倫子の写真を思い出したのは, 同じく生活の中にあるキラキラした感覚を切り出していたからかもしれない (もっとも, 川内のように露出は高くないが).

美術館は, 田んぼの中にポツんとあって, 向こうには大山が見える(今日はキレイには見えなかったが), そんなシチュエーションにあった (酒田市・土門拳記念館と似ている).
アクセスは不便だが, それはそれで味があっていい.
のんびり, ゆったりした気分になれた.

まなざしの記憶―だれかの傍らで
「聴く」ことの力―臨床哲学試論