島田雅彦 (2007). カオスの娘:シャーマン探偵ナルコ. 集英社.
key words:ウイルタ, トメさん, 夢合わせ (:118), サイト「カオスの娘」, 真琴と亜里沙と真理子, 世界経済評議会
作家本人の講演を聴く機会があり, 図書館から借りてきた1冊.
あとがきで作家が書いているとおり, 「スピリチュアル・ミステリー」(:345)とよばれるものなのだろうか.
物語としては面白く, 読んでいて飽きなかった.
ただ, 終盤いよいよ明らかになる事件の真相や真実を悪霊に語らせてしまったり (:258), 物語において大事な場面である亜里沙がMAKOTO(真理子)と関連付けられる部分(:252)も端折られていたりして…, なんだか少し残念だった.
物語は前半, 眠り病である「ナルコレプシー」(:9)を患う12歳の少年・ナルヒコが, シャーマンである祖母の意志を継ぎ, シャーマンになるべく修行を重ねる場面を描く.
その一方で, 魔王子(佐世保に住む男)に監禁され飼育される少女・真琴(真琴は魔王子に与えられた名前で, 忘れていた本当の名前は真理子)の残酷な日々と, 魔王子を殺し彼のもとを離れた後(魔王子のもとを離れてからは亜里沙と名乗る)もさらに殺人を重ねていく亜里沙の壮絶な日々を描く.
後半, 小説は真理子が助けを求めた末期癌を患う大学教員サナダと, ナルヒコと真理子の3人の物語を描く.
真理子(真琴であり亜里沙である)の人生をめちゃくちゃにした権力者らを憎むサナダは, 世界経済評議会のVIPメンバーを相手に自爆テロを遂行する (299-310).
…要約して書けばそういうことになるのだが…, 亜里沙がサナダのもとを訪れる背景や, サナダが自爆テロを起こすまでに至った経緯に(少し説明はされるものの)なんだか違和感があり, 亜里沙の狂気・復讐と, サナダの世界への憎しみ・テロとが結びつくようにはやはり最後まで思えなかった.
(ところで, サナダは遺書の形で自爆テロの「やり方」を世に残すのだが…, 世界各地でテロが相次いでいる2017年にこの小説を読むとなんとも空恐ろしい…)
色々と引っかかるところはあるが, 物語の加速感は読んでいて心地よい.
ふと, 村上春樹だったらどうやって書いただろうか…,
とそんなことを思ってしまった.
彼だったらきっと大事な部分を悪霊には語らせなかっただろう.
もっとも, そんなことはありえないのだが.
(米沢のカレー屋さん・ラグパティのグリーンポークカレー弁当 (↓). おなかが破裂しそうなほど満腹になりますが, 美味しいんです)