第7回 声楽アンサンブルコンテスト全国大会2014
2014.03.23 / 福島市音楽堂
審査員紹介のあと, 郡山東高校の女声合唱(16人)によるラトビア民謡からスタートしたコンテスト.
はじめから透き通る声で会場中が満たされる.
どの団体もとても魅力的で, コンテストとはいえどれか一つを選べるようなレベルではなかったので, 以下, 少しずつ全団体についてまとめてみる.
2団体目の郡山市立安積中学校は佐藤賢太郎「Missa Pro Pace」の「Kyrie」から.
中学生のものではないヴェールに包まれた芯のある声で, だんだんと厚みを増していくハーモニーが素晴らしかった.
3団体目の熊本県・山鹿中学校の女声合唱は「涙」(無伴奏女声合唱曲集「なみだうた」(竹久夢二/信長貴富)から)の完璧に合ったunisonの圧力が印象的だった.
4団体目, 宮城県の一般団体「Bricolage」の8人は明るい音色の男声がbravi.
素朴で穏やかな優しいうた (Pekka Kostiainen曲「Veret tuli mun silimihini」).
遥か昔, 音楽は こんなふうに始まったのかも,
と思ってしまう.
5団体目の福島東高校はポジティフ・オルガンとチェロが加わった編成.
対位法声部の扱いはやはり難しいなと思ってしまう
(個人的にはもっと少人数の方がよさが出るのでは, と思った).
休憩を挟んで6団体目は郡山高校の混声合唱.
「Missa brevis op.102」(Knut Nystedt曲)はとても丁寧.
「i thank You God for most this amazing day」(e.e.cummings
/ Eric Whitacre)は高らかに歌い上げられた.
7団体目は福井の童声合唱団「Smile」(15人中 男子2人).
シアターピース的に はじまった「かくれんぼ」(片岡輝/大熊崇子:同声(女声)合唱曲集「あそぶ神々」から)が印象的.
難しい現代曲をぴったりと歌い上げる子どもたちに驚いた.
8団体目の神奈川県・清泉女学院中学は安心して聴けるピッチとハーモニー.
後半, 半円型に並び替えて歌われた「Ubi Caritas」(Ola Gjeilo)と「Confitemini Domino」(Gyongyosi Levente)の現代宗教曲が圧巻だった.
複雑なハーモニーが高らかに鳴り響き光が差しこんだ.
9団体目は愛媛の一般団体「Vocal Ensemble Enchante」.
間宮芳生のコンポジションの後で歌われた「わが抒情詩」(草野心平/千原英喜:混声合唱のための「コスミック・エレジー」から)の, どこまでも羽ばたく自由な声がなんとも魅力的だった.
10団体目の安積黎明高校の女声合唱(16人)は, 完璧なハーモニーでしっとり「かなしみについて」(谷川俊太郎/三善晃:無伴奏女声合唱のための「かなしみについて」から)を歌い上げた.
昼休憩を挟んで, 11団体目は青森の一般合唱団Apio (女声6・男声5).
Josquin des PrezのKyrieはドラマチックな表現.
ただ, もっと丁寧で素朴な方が曲のよさが出せたのかもしれない.
Palestrinaの「Ave Regina
coelorum」は男声のピッチが少し残念だった.
12団体目, 郡山第二中学校はオルガン・弦楽合奏(!)が入った編成 (Mozart「Missa in C KV258」).
最初のKyrieから圧巻.
弦楽器も, soloを務めた4人も当然中学生なわけだが, 驚く表現力だった.
13団体目は埼玉・浦和第一女子高校.
ラトビアの合唱曲(Selga Mence他「Tris Miniaturas」から3曲)は不思議なエコーと拍子感が印象的.
とても難しいハーモニーなのに, 丁寧に仕上げられていた.
14団体目, 福島の一般団体・福島室内合唱団ではこの日はじめて伴奏にピアノが加わる.
こうして聴くと, ピアノが入る合唱はやはり難しいと思ってしまう.
無伴奏で歌われたFranz Bieblの「Ave Maria (Angelus Donmini)」(「Coro a Tre
Voci Femminili(三つの聖歌)」から)が美しかった.
ラストの15団体目は郡山第五中学校.
こちらは弦楽合奏にFlとCl, オルガンが加わった編成.
Rheinbergerの「Messe in C
op.169」からKyrie, Gloria, Agnus Deiの3曲が歌われたが, 冒頭のやさしい弦に最初からうっとりする.
ソリストの歌声も素晴らしく, 特にアニュス・デイのテノールがbravoだった.
審査の待ち時間で開催されたフレンドシップコンサートでは, フィリピンからの3つの団体による合唱(KILYAWAN MALE CHOIR(男声合唱)による現代曲, MUNTINLUPA VOCAL ENSEMBLEによる「We are the world」, VOICE OF THE SOUTH CHILDREN'S CHOIRによる猫(おそらく…)の鳴き声によるコンポジション)と, 樋口達哉(ten)・金井信(pf)によるステージが届けられた (うたもうたうピアニストと, アンコールの「ネッスンドルマ」が印象的).
浅井敬壹氏(合唱連盟理事長, ボブ・チルコットと仲良し!)のあいさつ, 佐藤正浩氏とボブ・チルコット氏による講評のあとで発表された結果は以下.
第5位 Smile
第4位 郡山第二中学校
第3位 安積黎明高校
第2位 郡山高校
第1位 郡山第五中学校
審査員特別賞 Smile
ボブ・チルコット賞 山鹿中学校
順位は付いたが, どの合唱も本当に素晴らしかった.
このレベルの合唱を一堂に聴くことができるコンテストは, 滅多に無いのではないだろうか.
最後の全体合唱(和合亮一/信長貴富「夜明けから日暮れまで」)のクオリティもやはり高く, 最後まで圧倒的な一日だった.