コリン・カリー・グループ ライヒ「ドラミング」ライヴ
2012.12.04 / 東京オペラシティ・コンサートホール
学生時代, スコットランドの作曲家・マクミランの「Veni, Veni, Emmanuel」(NAXOS)が好きだった.
そのスリリングな曲で打楽器を演奏していたのが, コリン・カリーである. 今回, そのコリン・カリーがライヒの曲で来日する!
そう聞いて, 会場に足を運ばずにはいられなかった.
1曲目は「クラッピング・ミュージック」.
コリン・カリーと, いつものキャップ姿で登場したライヒ本人, 2人による演奏. たった2人の手拍子に聴き入っている1600人もの観客 (ホールはほぼ満席).
よく考えれば不思議な光景だ.
2曲目は「ナゴヤ・マリンバ」.
ふくよかなマリンバの音色は, どこか水の中にいるような感覚にさせる. 実際に聴こえてくる音とは違うタイミングでマレットを振り下ろすさまは, なんだか衛星中継を見ているかのようだった.
3曲目は「マレット楽器、声とオルガンのための音楽」.
浮かび上がるマリンバ, グロッケン, ヴァイブのモザイクと, 次第に引き伸ばされていくオルガンとヴォーカルが絡み合う. 鍵盤に向かう奏者たちはみな職人(鍛冶屋かなにか)のようだ.
そして, 寸分違わずリピートされるヴォーカルはまさに神業.
ヴォーカルが打楽器群の響きを真似し始めると, ヴォーカルがエコーなのか, 打楽器がエコーなのか…,どちらともなく近づいてきてはまた遠くに消えていくのだった.
それにしてもこの厚みはなんだろう.
CDで聴くのとは全く違う.
休憩を挟んで4曲目は「ドラミング」.
4セットのボンゴから始まったpart 1は, 4つの四分音符が次第に分裂していく不思議と, ぞくぞくする3拍子が魅力的. そのリズムにそっとマリンバの3人が同じリズムで加わり, part 2が始まる.
マリンバは入れ替わりながら奏者を増やし, そこにヴォーカルの2人も加わりだす.
ヴォーカルはマリンバのズレで浮かび上がるメロディをなぞりながらfade in / outを繰り返すのだが, このヴォーカルの存在が大きい.
聴衆はヴォーカルのラインをガイドに, 次々と新発見へ導かれることになる.
近づいては遠ざかるヴォーカルはドラマチックに立体的で, このパートがあるのとないのとでは全く違うことになるだろう.
9人まで増えた奏者に取り囲まれながら叩かれるマリンバ3台のカラフルな心地よさ, そして音型がガラッと変わった瞬間のワクワク感といったら, それはもう本当にライヒならでは.
とても心地よかった.
マリンバのもとから1人, 2人と奏者は上手側のグロッケンへ移りだし, グロッケン3人からpart 3はスタートする.
マリンバにグロッケンの低音が重なりだす.
マリンバが完全に消えると, そこはもう別世界, 遊園地のよう.
ヴォーカルに変わって, そこに口笛とピッコロが加わり, 音楽は天空のそれに化ける.
しばらくしてグロッケンの音が減っていき, 四分音符に戻ったところに, マリンバとボンゴが最初と同じパターンで加わる (part 4).
編成は次第に大きくなっていって, 最後は全員(マリンバ・3, ボンゴ・3, グロッケン・3, ヴォーカル・2, ピッコロ・1)でモザイクが奏でられる.
目を瞑ってみると, 実際に演奏しているのかそれとも頭の中だけでなっているのか, まったくわからなくなる.
車酔いに似た感覚で心地よく漂っていると, エンディングが潔く迎えられた.
あっという間の50分間だった.
ほぼ満席の客席が, 下から上までスタンディーグ・オーベーション.
カーテンコールはいったい何度繰り返されただろうか. この場にいることができてよかった, 素直にそう思えた熱いステージだった.
Veni Veni Emmanuel / Tryst